はじめに:「最近の若者は…」と言う前に
業績が伸びない、優秀な社員が辞めていく、職場の空気が重い。
そんなとき、多くの経営者はこう口にします。
「最近の若い社員は我慢が足りない」
しかし、リクルートの調査によると、離職理由の上位は
- 「会社の方向性が不明確」
- 「将来の見通しが持てない」
つまり、原因は若者の忍耐不足ではなく、社長の言葉が届いていないことかもしれません。
組織を壊す社長の3つの特徴
1. 会社の方向性を語らない
社長の頭の中にビジョンがあっても、社員に伝わっていなければ「ない」のと同じです。
- 「社長が何を考えているのかわからない」
- 「この会社はどこに向かうのか」
社員がこう感じるとき、職場には静かな不安が広がります。
方向性の不在は、モチベーション低下と離職の最大要因です。
2.方針がコロコロ変わる
朝令暮改、気分で指示が変わる、思いつきの発言。
こうした揺らぎは、現場を混乱させます。
社員は「次は何を言われるのだろう」と様子を伺い、挑戦よりも防御に回ってしまいます。
3.問題を社員のせいにする
「やる気がないのは社員の問題だ」
そう考える社長は、無意識のうちに責任を放棄しています。
リーダーが責任を手放した瞬間、信頼という土台が崩れ、優秀な人から辞めていきます。
変化の実例:ある社長の転換
あるサービス業の社長は、毎朝社員を集めては不満を漏らしていました。
「なぜもっと自主的に動けないんだ」
社員は黙って聞くだけで、やがて誰も発言しなくなりました。
半年後、若手の離職が相次ぎ、残ったのは「言われたことしかしない人」だけ。
転機が訪れたのは、社長がこう気づいたときでした。
「自分が空気を悪くしていたのかもしれない」
そこから「どうしたら良くなると思う?」と社員に問いかけ始めたところ、意見が出るようになり、組織の雰囲気が一変したそうです。
信頼を取り戻す3ステップ
ステップ1:自分の思いを言葉にする
「何のためにこの会社をやっているのか」
「どんな未来をつくりたいのか」
完璧な言葉でなくて構いません。社長の本音を聞いた瞬間、社員の表情は変わります。
明日の朝礼で、あなたの思いを3分間語ってみてください。
ステップ2:小さな約束を守る
方針を語ったあとは、小さな有言実行を積み重ねます。
- 「来週までに新しい提案制度を作る」と宣言し、実行する
- 「金曜は定時退社」と決め、社長自身が守る
その一つ一つが、社員に「この会社は信頼できる」と感じさせるサインになります。
ステップ3:社員の声を聞く勇気を持つ
経営は独断では進みません。現場の声を修正データとして受け止め、再び方向を示す。
それが強い組織をつくる姿勢です。
面談で、「うちの会社、どこに向かっていると思う?」と聞いてみてください。
驚くほど多くの気づきが得られます。
まとめ:社員は社長の鏡
職場の空気が悪くなるとき、多くの場合トップが迷っています。
社員は社長の鏡。社長が前を向けば、社員も前を向きます。
ダメな社長とは、能力がない人ではなく、語らない人・聞かない人・動かない人のことです。
今日から始める一歩は、自分の考えを言葉にして伝えること。
それだけで、会社は少しずつ動き始めます。
執筆:埼玉県熊谷市の社会保険労務士・竹内由美子(中小企業の人と職場の課題をサポート)
「もしかしてうちの職場も当てはまるかも」と感じたら、早めにご相談ください。状況を整理し、必要に応じて改善策や対応方法をご提案いたします。




