はじめに
「やる気のある人を採用したい」 多くの経営者が、そう願っています。
でも現実には、
- 応募が集まらない
- 内定を出しても辞退される
- 入社してもすぐ辞めてしまう
そんな悩みを抱えていませんか。
実はその原因、応募者のやる気不足ではないことがほとんどです。
問題は、会社側が「将来のイメージ」を示せていないことにあるのではないでしょうか。
なぜ「やる気のある人」が採用できないのか
面接で、こんなやり取りをしていませんか。
「昇給はありますか?」
「頑張れば上がりますよ」
「どれくらい頑張れば?」
「それは…人それぞれで…」
この瞬間、やる気のある人ほど不安になります。
やる気のある人は、
- 将来どうなれるのか
- 努力がどう評価されるのか
- この会社で成長できるのか
を、とても現実的に考えています。
「頑張れば評価する」だけでは、判断材料が足りないのです。
キャリアパスとは何か
キャリアパスとは、「この会社で、どう成長していけるか」を示す地図です。
難しい制度は必要ありません。
大切なのは、次の3点が見えることです。
- どんな仕事ができるようになれば
- どんな役割を任され
- どれくらいの処遇になるのか
これを、A4用紙1枚にまとめます。
キャリアパスのシンプルな例
たとえば、こんなイメージです。
入社〜1年目
・指示された仕事を一通りこなせる
・基本的な報連相ができる
・月給〇万円
1〜3年目
・一人で仕事を完結できる
・トラブルにも自分で対応できる
・月給〇万円〜〇万円
3年目以降
・後輩を指導する
・チームで成果を出す
・月給〇万円〜〇万円
・一部の判断を任される
「ここまでできたら、次の段階へ」
この成長の目安があるだけで、働くイメージは一気に具体化します。
【実例】製造業G社の変化
従業員15名の製造業G社では、以前、面接で「頑張れば昇給する」と伝えていましたが、具体的な説明はできていませんでした。
その結果、内定辞退が多い、やる気のある人ほど来ない、入社しても1年以内に離職。
そこでG社は、簡単なキャリアパス表を作り、面接では次のように説明しました。
「3年後にはこのレベルを目指します」
「実際に、この社員はここまで成長しています」
すると、応募者の反応が変わりました。
「目標が分かりやすい」
「ここなら頑張れそう」
結果として、内定承諾率が大幅に改善、早期離職も減少しました。
社長はこう話しています。
「キャリアパスを見せただけで、応募者の本気度が変わった」
面接でキャリアパスを使うコツ
ポイントは3つです。
- 給与の話が出たタイミングで見せる
最初から出す必要はありません。「将来どうなるか」を聞かれたときがベストです。 - 実在の社員を例にする
「実際に、この人はここまで来ています」
この一言で、信頼感が一気に高まります。 - 反応を見る
前向きな人は、「いつ頃ここを目指せますか?」と質問してきます。
逆に、成長よりも負担の少なさを優先して質問してくる場合は、慎重に見極めた方がよいでしょう。
まとめ:キャリアパスは約束である
キャリアパスは、ただの資料ではありません。
会社と社員の約束です。
だからこそ、
- 実現できる内容にする
- 定期的に見直す
- 入社後も一緒に確認する
この3つが欠かせません。
キャリアパスがあると、
- やる気のある人が集まり
- 入社後のミスマッチが減り
- 評価への不満も減っていきます。
「やる気のある人が来ない」のではなく、
「やる気を発揮できる道筋が見えていない」だけかもしれません。
まずは、A4一枚、そこから始めてみませんか。
執筆:埼玉県熊谷市の社会保険労務士・竹内由美子(中小企業の人と職場の課題をサポート)
「もしかしてうちの職場も当てはまるかも」と感じたらお気軽にご相談ください。






