若手社員が「放置された」と感じる理由

はじめに:同じ出来事でも受け取り方が異なる上司と部下

「突然辞めた」と感じる上司。
一方で、「放置された」と感じる若手社員。

同じ職場で、同じ時間を過ごしていたはずなのに、上司と若手の間には、埋めがたい認識のズレがあります。

若手がつらいのは、厳しく言われたことではありません。
「何も言われなかったこと」です。

  • 今のやり方で合っているのか
  • どこを直せばいいのか
  • この先、どう成長していけばいいのか

何も示されないまま時間だけが過ぎていく。
それは、若手にとって「見捨てられたような感覚」になります。

なぜ上司は声をかけなくなるのか

多くの上司に話を聞くと、理由は驚くほど共通しています。

  1. 忙しすぎて余裕がない
  2. 「自分で考えろ」という昔の価値観 
  3. パワハラと言われるのが怖い(一番多い)

「何か言って、問題になったらどうしよう」
「注意のつもりが、ハラスメントにならないか不安」

その結果、上司は何も言わない選択をします。
でも若手から見ると、それは無関心に映ります。

上司の沈黙は、若手にこう伝わります。
「期待されていない」
「何をしても見られていない」

パワハラと教育指導の違い(具体例)

しかし、適切なフィードバックはパワハラではありません。
むしろ、何も伝えずに放置することこそ、育成の放棄です。

そこで、まずはパワハラと教育指導の違いを明確にしましょう。

1.パワハラの定義(厚生労働省)

以下の3つの要素をすべて満たすものが「パワハラ」です。

  1. 優越的な関係を背景とした言動
  2. 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
  3. 労働者の就業環境が害されるもの

2.具体例で見る境界線

場面❌ パワハラ⭕ 教育指導
ミスの指摘「何度言ったらわかるんだ!バカか!」「ここはこうすると良くなるよ。次はどうする?」
遅刻の注意「やる気がないなら辞めろ」「遅刻が続いているけど、何か困っていることはある?」
仕事の指示「使えないな。もういい、自分でやる」「最初は難しいよね。一緒にやってみよう」
評価のフィードバック「お前は向いてない」(人格否定)「この業務は苦手そうだね。得意な分野を活かそう」(行動への指摘)
重要ポイント・人格を否定する
・感情的に怒鳴る
・改善策を示さず責めるだけ
・行動に対してフィードバック
・具体的な改善策を示す
・冷静に、建設的に伝える

月1回のリーダー会議での取り組み

最近、ある会社では月1回、管理職だけの小さな会議を始めました。

テーマは、
「この言い方、アウト?セーフ?」
「これは指導?それとも行き過ぎ?」

正解を決める場ではなく、迷いを共有する場です。

この取り組みで、管理職の表情が変わりました。
「一人で判断しなくていい」
その安心感が、若手への声かけにつながっていきました。

まとめ:何も言われない職場が、気力を奪っていく

若手社員が「放置された」と感じる背景の一つには、
上司の優しさと「パワハラへの恐れ」が混ざっています。

しかし、適切なフィードバックはパワハラではありません。

今日からできること3つ

  1. 人ではなく「行動」に目を向ける
  2. 責めるのではなく「次」を一緒に考える
  3. 一度伝えたら、必ずフォローする

厳しさよりも、無関心のほうが人を壊します。
正しい知識を持ち、適切な指導をすることで、若手社員は安心して成長できます。


執筆:埼玉県熊谷市の社会保険労務士・竹内由美子(中小企業の人と職場の課題をサポート)

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