はじめに:部下が「言い訳」をする本当の理由
部下がミスをしたとき、「初めてなので」「聞いていなかったので」と説明することを「言い訳」だと感じたことはありませんか?
しかし、部下が防衛的になるのは、次のような要因があることが少なくありません。
- 過去に感情的に叱責された経験がある
- 十分な教育やサポートを受けられなかった
- ミスを報告すると責められる雰囲気がある
- 「できて当然」というプレッシャーを感じている
つまり、「言い訳」に見える反応は、職場の心理的安全性の低さのサインかもしれません。
この記事では、部下のミスを成長機会に変え、信頼関係を築くマネジメント手法をお伝えします。
心理的安全性が低いサイン
以下のような状況があれば、チームの心理的安全性が低下している可能性があります。
- 部下がミスを報告するとき、明らかに緊張している
- 小さなミスでも隠そうとする傾向がある
- 「わからない」「できない」と言いにくい雰囲気がある
- 質問や相談が極端に少ない
- ミスの報告が遅れがちになる
- イレギュラーな判断を自分でせず、すべて確認を求めてくる
これらは、部下が失敗を恐れ、自己防衛に回っているサインです。
ミスを報告しやすい環境をつくる5つのポイント
1. まず「事実確認」から始める
最初の一言で、部下は責められる場かどうかを判断します。
NG例: 「なんでこんなミスをしたんだ!」
OK例: 「何が起きたのか、状況を教えてください」
2. 背景や状況を丁寧に聞く
確認するポイント:
- マニュアルや手順書は整備されていたか
- 適切な研修や引き継ぎは行われていたか
- 相談できる環境はあったか
- イレギュラーな状況ではなかったか
- 必要な情報は共有されていたか
「初めての業務だったので」は、教育体制の問題を示唆している可能性があります。
3. 「なぜ」を重ねる(責めずに原因を探す)
目的は犯人探しではなく、再発防止の核心を見つけることです。
(例)手順を間違えた→ マニュアルに書いていない → イレギュラー対応が未整理
→ 経験が共有される仕組みがない
このように、「なぜ」を重ねると、個人ではなく組織の課題が見えてきます。
4. 改善を「一緒に」考える
部下に「どうするつもりだ?」と問い詰めるのではなく、一緒に解決策を考えます。
良い問いかけ:
- 「どうすれば同じミスを防げると思う?」
- 「マニュアルに追加すべき内容はある?」
- 「他のメンバーにも共有した方がいい情報はある?」
- 「私(上司)としてどんなサポートができる?」
5. ミスを組織の学びに変える
個人のミスを責めて終わるのではなく、組織全体の改善につなげます。
具体的なアクション:
- マニュアルやチェックリストの更新
- チーム内での情報共有(個人を責めない形で)
- 業務フローや研修内容の見直し
可能であれば、「○○さんのおかげで、この問題に気づけました」と伝えることで、ミスが成長機会になります。
フィードバックの実践方法(この順で話す)
1: 事実 →「○○という状況で合っていますか?」
2: 影響→「この結果、△△という影響が出ました」
3: 背景 →「あなたの立場からは、どんな状況でしたか?」
4: 改善→ 「次はどうすれば防げそう?」
5: 期待→ 「成長してほしいと思っています。一緒に改善していきましょう」
避けたい言動
- 人格を否定する言葉→「だからダメなんだ」「能力がない」
- 蒸し返し、比較、怒鳴り、晒し叱責
これらはパワハラに該当する可能性があり、部下の心理的安全性を大きく損ないます。
組織として改善すべきこと
個人の対応だけでなく、組織全体の仕組みも見直します。
- 教育・OJTの標準化→属人化を減らす
- 手順書・FAQの更新・イレギュラーも記載
- 相談しやすい仕組み
→1on1、気軽に質問できるツール、「わからない」と言いやすい文化づくり - 振り返り文化→ミスを責めずに改善へ
- 管理職の学び
→マネジメント研修の受講、心理的安全性の理解、フィードバックスキルの向上
まとめ
部下の「言い訳」に見える反応は、心理的安全性の低下サインかもしれません。
大切なのは、ミスを責めて終わらせず、事実→背景→改善の順で対話し、学びとして残すことです。
心理的安全性の高い職場では、ミスが隠されず、改善が早く回ります。
その土台をつくるのは、管理職の姿勢と対話スキルです。
今日からできる一歩として、「最初の一言」を、感情ではなく、事実確認に変えるところから始めてみてはいかがでしょうか。
執筆:埼玉県熊谷市の社会保険労務士・竹内由美子(中小企業の人と職場の課題をサポート)
「もしかしてうちの職場も当てはまるかも」と感じたらお気軽にご相談ください。





