資格手当には2つの考え方がある
資格手当の設計は、会社の評価姿勢がそのまま表れます。
大きく分けると、考え方は次の2つです。
パターン① 所持型(資格を持っているだけで支給)
例:運転免許を持っていれば月3,000円等、資格取得=自動的に手当支給
| メリット | デメリット |
| シンプルでわかりやすい | 実務で使っていなくても支給される |
| 管理の手間が少ない | 実力とのズレが生じやすい |
パターン② 実務型(資格+実務活用で支給)
例:宅建士資格を持ち、かつ不動産取引業務に従事 → 月10,000円
| メリット | デメリット |
| 公平感が出やすい | 評価基準を作る必要がある |
| 「資格=活かしてこそ評価」というメッセージになる | 管理職の判断力が問われる |
多くの会社は①の「所持型」を採用していますが、実はトラブルが起きやすいのもこのタイプです。
【セルフチェック】あなたの会社の資格手当、大丈夫?
一度、チェックしてみてください。
- □ 支給条件が就業規則に明記されていない
- □ 「実務で活用しているか」の判断基準が曖昧
- □ 今は使っていない資格にも手当を出している
- □ 無資格だが実力のある社員から不満が出ている
- □ 何年も制度を見直していない
✔ 3つ以上 → 見直し検討レベル
✔ 5つ → トラブル予備軍です
実務で多いトラブル3選
トラブル① 資格はあるが、実務では使っていない
危険物取扱者の資格を持つAさんに月5,000円。
でも今は事務職で、資格は使っていない。
会社の本音は、「正直やめたい。でも規程があるからやめられない」。
👉 所持型の典型的なジレンマです。
トラブル② 無資格だが実力のある社員の不満
無資格のBさんの方が仕事ができる。
それなのに、資格を持つAさんの方が給与が高い。
Bさんの本音は、「努力や成果より、紙切れが評価されるの?」。
👉 資格手当が、やる気を下げる要因になることもあります。
トラブル③ 減額・廃止しようとして紛争に
業績悪化で資格手当を見直したい。
しかし社員から「給与の一部だから一方的に減らせない」と反発。
これは感情論ではなく、法的にも正しい主張です。
資格手当は労働基準法上の「賃金」に該当します。
👉一方的な変更は労働契約法違反のリスクがあります。
資格手当を「揉めない制度」にする3つのポイント
ポイント① 支給条件を言語化する
NG例:「資格を持っている社員に支給する」
OK例:実務型の支給条件
- 会社が指定する資格であること
- 現在の業務で継続的に活用していること
- 活用内容を上長が確認できること
※ 「実務活用」の中身まで書いておくと、後がラクです。
ポイント② 評価+育成の仕組みをセットにする
資格手当を「もらいっぱなし」にしないために、
- 年1回、実務での活用状況を確認
- 基準未達の場合は、すぐに打ち切らず育成期間を設ける
- 期待する水準を事前に共有する
※「評価するが、切り捨てない」設計が公平感を生みます。
ポイント③ 見直しは慎重すぎるくらいでちょうどいい
既存の資格手当を減額・廃止する場合は、
- 合理的な理由(不公平是正・業務内容変更など)
- 事前説明と合意形成
- 経過措置(例:◯年間は現行維持)
を必ずセットにします。
※ 一方的な変更は、ほぼ確実に揉めます。
まとめ:資格手当は「出す・出さない」より「どう設計するか」
資格手当は、モチベーションを高める武器にも、不公平感を生む火種にもなり得ます。
重要なのは、
- 「資格を持っているか」だけで終わらせない
- 「どう活かしているか」を見る
- 定期的に見直す前提で設計する
ことです。
資格は大切です。でも、資格=仕事ができるとは限りません。
だからこそ、資格手当は「知識」と「実務」の両方を見る制度にしておくと、会社と社員の両方が納得できる仕組みになります。
執筆:埼玉県熊谷市の社会保険労務士・竹内由美子(中小企業の人と職場の課題をサポート)
「もしかしてうちの職場も当てはまるかも」と感じたら、早めにご相談ください。




