はじめに:その一言が「爆弾」に変わる
「採用を急ぐあまり、つい条件を良く言ってしまった」
「面接のときの雑談で、残業はほとんどないと伝えた」
経営者にとっては、その場の「軽い気持ち」の会話かもしれません。
しかし、入社後まもなく「約束が違う」という不満が爆発し、トラブルに発展するケースは後を絶ちません。
特に、基本給、有給、休日といった、生活に直結する食い違いは、致命的です。
労働者にとって、面接は「人生の賭け」
採用する側は、何十人、何百人のうちの一人を見ているかもしれません。
しかし、社員側にとっては、人生をかけた「唯一の選択」です。
彼らは社長の言葉を信じ、他社の内定を断り、生活のすべてを預ける決意をして入社してきます。
- 「記憶にない」
- 「そんなつもりで言ったのではない」
という言い訳は、相手の人生を否定することと同義になってしまいます。
だからこそ、できない約束は最初からしない、という「誠実な勇気」が必要です。
口約束を『書面』に変える仕組み
「誠実であろう」という個人の努力だけでは、記憶の書き換えやミスは防げません。
そこで、トラブルを防ぐ3つの仕組みを導入しましょう。
- 仕組み①:面接シートに「伝えたこと」を記録する
何を話し、何を約束したか、その場でメモを残し、面接終了時に「今日お伝えした条件はこの通りです」と復唱・確認するクセをつけます。 - 仕組み②:内定承諾前に「雇用契約書」を提示する
入社当日ではなく、入社を決意してもらう前の段階で「正式な条件」を書面で渡します。2024年の法改正以降、労働条件の明示ルールは厳格化しています。
書面化は、会社を守るための防波堤です。 - 仕組み③:条件が変わる際は「理由」をセットで
募集時と採用時で、やむを得ず条件が変わる場合は、
・必ず書面で「変更箇所」を明示し、
・その理由を丁寧に説明します
「言い訳」ではなく「誠実な説明」ができるかが、信頼の分かれ道です。
結論:約束は守る。守れない約束はしない。
労務トラブルの多くは、法的な知識不足よりも、こうした「小さな不信感」から始まります。
不誠実な対応を続ければ、せっかくの採用も即離職に繋がり、ネット上には「ブラック企業」という悪評だけが残ってしまいます。
- 約束は守る。守れない約束はしない。
- その約束を「書面」にして手渡す。
- もし約束を破ってしまったら、心から謝罪し、理由をきちんと説明する。
これが社員と信頼関係を築く第一歩です。
立場は違っても、同じ人間同士なのですから。
執筆:埼玉県熊谷市の社会保険労務士・竹内由美子(中小企業の人と職場の課題をサポート)
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