なぜ注意しても部下は変わらないのか。上司が先に変わった職場の話

うまくいかない上司・部下関係の正体

「なんで、あいつは動かないんだ」

金曜日の夕方。課長の田中さん(仮名)は、また同じことでイライラしていました。
何度も説明したはずの仕事で、部下の佐藤くんが、また同じミスをしていたのです。

「俺が若い頃は、誰も教えてくれなかった」
「自分で調べて、夜中まで残って覚えた」

そんな思いが、頭をよぎります。

翌週、田中さんは佐藤くんを呼び、少し強めに注意しました。
しかし、佐藤くんの表情は硬くなる一方。

その日を境に、報告はさらに遅くなり、質問は減り、ミスも減りませんでした。

このような悪循環、あなたの職場でも起きていませんか。

励ましもせず、丁寧に教えもせず、やみくもにダメ出しばかりすると、部下は自信を無くし、または反発して問題社員化します。

優秀な人ほどハマる「自分基準」の罠

上司になる人の多くは、仕事ができる人のはずです。

  • 自分で考えて動いてきた
  • 失敗しながら学んできた
  • 結果を出して評価されてきた

だからこそ、部下の「できなさ」が理解できない。

「こんな簡単なこと、なぜ分からない?」
「一度言えば、普通はできるだろう」

でも、ここに大きな落とし穴があります。

あなたの「当たり前」は、部下にとっての当たり前ではありません。

あなたが20年かけて身につけた判断力を、入社3年目の部下が持っているはずがないのです。

それでも、ダメ出しを続けると、部下の心はこう変わっていきます。

  • 自信をなくす
  • 質問できなくなる
  • 「どうせ怒られる」と黙る
  • あるいは、反発する

皮肉なことに、部下は、上司の関わり方どおりに育っていくのです。

ある上司が気づいたこと

冒頭の田中さんは、ある研修でこんな問いを投げかけられました。

もしあなたが、今の部下の立場で、今のあなたの上司の下で働いていたら、どう感じますか?」

最初は、正直ピンと来ませんでした。

でも、紙に書き出してみると、思いがけない言葉が並びました。

  • 怖くて質問できない
  • どうせ怒られるから報告したくない
  • 何が正解なのか分からない

そこで、ハッとします。
「厳しく育てているつもりだったけど、ただ怒っていただけかもしれない」

田中さんが変えた、たった3つのこと

① まず「できた点」を伝える

注意の前に、「ここは良くなったね」「この視点は助かったよ」と、事実を言葉にしました。

② 責める前に「なぜ」を聞く

「なんでできないんだ」ではなく、
「どこでつまずいた?」「何が難しかった?」と聞くようにしました。

③ 一緒に考える時間をつくる

週に一度、15分だけ。雑談しながら、仕事の進め方を話す時間を取りました。

すると、少しずつ変化が現れます。

  • 報告が早くなる
  • 質問が増える
  • 3か月後には、自分から改善案を出すようになった

変わったのは、部下だけではありません。先に変わったのは、上司自身でした。

明日からできる、たった3つのヒント

  1. 今日の自分の言葉を振り返る
    注意ばかりしていなかったか。
    感謝や承認は、口にしていたか。
  2. 部下の立場で考えてみる
    「今の言い方、自分が言われたらどう感じるだろう?」
  3. たった一言、変えてみる
    「おはよう」のあとに、「昨日の資料、助かったよ」を足す。

関係は、そこから動き始めます。

最後に

「自分が変われば、相手も変わる」
人間関係の現場で、何度も見てきた事実です。

上司が変われば、部下も変わる。
その最初の一歩を踏み出せるのは、立場が上の人だけです。

でもそれは、責任であると同時に、特権でもあります。

あなたの小さな変化が、チームの空気を変えるきっかけになるかもしれません。


執筆:埼玉県熊谷市の社会保険労務士・竹内由美子(中小企業の人と職場の課題をサポート)

「もしかしてうちの職場も当てはまるかも」と感じたらお気軽にご相談ください。

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