新人の田中が、質問しなくなった
入社3ヶ月目の田中(24歳)は、最初の頃はよく質問をしていました。
「課長、これはどうすればいいですか?」
「この処理、合っていますか?」
でも、最近は質問が減りました。
課長の山田(45歳)は、「ようやく慣れてきたんだな」と思っていました。
ある日、大きなミスが起きた
ある日、田中が処理したデータに大きなミスがありました。
顧客への請求金額が間違っていたのです。
「田中、なんでこんなミスをしたんだ!」
山田が詰め寄ると、田中は小さな声で言いました。
「……すみません」
「分からなかったなら、なんで聞かなかったんだ?」
田中は、何も答えませんでした。
本当の理由
後日、田中の同僚の佐藤が、山田に声をかけました。
「課長、田中くんのこと、気づいていますか?」
「何が?」
「田中くん、課長に質問するとき、すごくおどおどしてるんです」
山田は驚きました。「そんなつもりはないんだが……」
「でも、課長が前に、『そんなこともわからないのか』って言ったの、聞こえました」
山田は、はっとしました。
確かに、忙しいときに質問されて、つい厳しく言ってしまったことがありました。
田中の心の中で起きていたこと
田中は、最初は積極的に質問していました。
でも、ある日、山田課長に、
「そんなこともわからないのか? 前も教えただろう」
と言われてから、質問することが怖くなりました。
そして、分からないことがあっても、自己判断で進めるようになりました。
それが、ミスにつながったのです。
山田課長が変えたこと
山田は、田中を呼びました。
「田中、この前はきつく言ってしまって悪かった」
田中は驚いた顔をしました。
「俺が忙しそうにしていると、聞きにくいかもしれないけど、構わずに聞いてくれ。
聞くことも仕事のうちだから」
「……本当にいいんですか?」
「ああ。分からないまま進めて、後でミスになる方がよっぽど大変だ」
田中は、少し安心した表情を見せました。
【解説】部下の質問の仕方で、現状を読み取る
部下の質問の仕方を観察すると、職場の空気が見えてきます。
- おどおどして聞いてくる
→「嫌な顔をされるのでは」と思っている可能性があります - ほとんど質問をしてこない
→「聞きづらい」「他の人に聞いた方が安心」
と考えているかもしれません
どちらも、部下から距離を置かれている状況です。
上司ができる対応策
① 安心して質問できる声かけをする
たとえば、
- 「私が仕事に集中していると聞きづらいかもしれないけど、構わずに聞いてね」
- 「聞くことも仕事のうちだから、遠慮しなくていいよ」
- 「何かわからないことない?」
と自ら声をかけ、部下が納得するまで質問に付き合います。
「聞いていいんだ」と思えたとき、部下は主体的に動き出します。
② 初歩的な質問を減らす仕組みをつくる
何度も同じ質問をされるとお互い大変です。
そこで、マニュアルや手順書を整えておくと、
部下は安心して確認でき、上司も効率的に指導できます。
まとめ:質問しやすい環境が定着につながる
部下は常に小さな「信号」を発しています。
質問の仕方や反応を見れば、今どんな気持ちで仕事をしているかが伝わってきます。
そのサインを早めにキャッチして環境を整えることができれば、
部下は安心して働き続けられるようになります。
特に新人の定着率が悪い職場では、質問しやすい雰囲気づくりがカギとなります。
質問しやすい職場は、成長しやすい職場
信頼関係の第一歩は、「いつでも聞いていいよ」という上司の姿勢から始まります。
執筆:埼玉県熊谷市の社会保険労務士・竹内由美子(中小企業の人と職場の課題をサポート)
「部下が質問してこない。どう接すればいいか」「新人がすぐに辞める。原因がわからない」そんなときは、お気軽にご相談ください。






