部下にカッとしたとき/信頼を壊さない処方とは

「どうして納期を守れないんだ!」

金曜日の夕方。山田課長は、部下の佐藤に怒鳴りました。

「佐藤、納期は今日だったはずだろう! なんで間に合わないんだ!」
「すみません……」
「すみませんじゃない! お客さんに何て言うんだ!」

佐藤は、黙って下を向いていました。山田課長は、怒りが収まりません。
「責任感がないんじゃないか? もっと真剣にやれよ!」

佐藤は、何も言いませんでした。


週明けの月曜日。社員の田中が、山田課長に声をかけました。

「課長、金曜日のこと、聞きましたか?」
「何が?」
「佐藤さん、営業部から金曜日の朝、急に追加依頼を受けたんですよ。
それで納期に間に合わなかったみたいなんです」

山田は、はっとしました。「……知らなかった」

「それと、先週の課長の指示、ちょっと曖昧だったみたいで、佐藤さん迷ってたんです」

山田は、何も言えませんでした。


山田は、佐藤を呼びました。
「佐藤、金曜日のこと、すまなかった」
「……」
「事情を聞かずに怒鳴ってしまった。営業から急な追加依頼があったんだってな」
「はい」

「それと、俺の指示が曖昧だったみたいだな」

佐藤は、少し驚いた顔をしました。
「……そうです。どこまでやればいいのか、迷ってました」

「そうか。次からは、もっと明確に伝えるよ。わからなかったら、遠慮せずに聞いてくれ」
「はい」

「あと、急な追加があったら、すぐに言ってくれ」
「……ありがとうございます」

つい、感情的に怒鳴ってしまう3つのケース

事例1:納期遅延

製造やIT業界でよくあるのが「納期に間に合わない」というケースです。

上司は怒りをあらわにしますが、実際には別部署から急な追加依頼があったり、
上司自身の指示が曖昧だったりすることもあります。

事情を確認せずに怒れば、社員は「理解されていない」と感じ、やる気を失ってしまいます。

事例2:クレーム対応

サービス業では「余計な一言」でクレームにつながることがあります。
しかし、本人はマニュアル通りに対応していただけかもしれません。
背景を確かめれば、問題はマニュアル側にあったと気づけることもあります。

事例3:突然の早退

「勝手に帰った!」と怒るケースもありますが、体調不良や家庭の事情でやむを得なかった、ということも多いもの。
事情を聞けば「次回はこう伝えてね」と前向きな話し合いにできます。

「まずは聞く」を実践した上司

山田課長は社労士に相談し、
怒りたくなったとき、次のことを実践するようにしました。

1.カッとしたら、深呼吸して一拍置く

2.怒鳴る代わりに、聞く

  • 「何があったの?」
  • 「どこで困った?」

3.事実を確認してから判断する


3ヶ月後。部下たちは、山田に相談するようになりました。

「課長、この件、ちょっと困ってるんですけど」
「どうした? 聞かせて」

山田は、怒鳴ることが減り、職場の雰囲気も良くなっていきました。

質問の形で聞けば、相手も安心して説明できます。
結果として誤解を防ぎ、信頼関係を深められます。

 まとめ:感情を抑えて「まずは聞く」

見える事実の裏には、必ず理由があります。

  1. カッとした時は、一拍置いて冷静になり
  2. 「なぜそうしたの?」と理由を尋ねることから始めましょう。

経営やマネジメントの要は「人との信頼関係」です。
感情をぶつければ信頼は崩れますが、理由を聞くことで信頼は強まります。

これだけで、誤解を防ぎ、社員の信頼を積み上げていくことができます。


執筆:埼玉県熊谷市の社会保険労務士・竹内由美子(中小企業の人と職場の課題をサポート)

「つい感情的に怒鳴ってしまう」「部下との信頼関係を築きたい」
そんなときは、お気軽にご相談ください。

📖 関連コンテンツ
 職場の人間関係や、人が辞める理由を、
 ドラマ形式で描いた連載を、noteで公開中です➡
▶︎ 上司部下シリーズ
▶︎ 辞める人たちシリーズなど

関連記事