適用拡大のスケジュールと対応ポイント
「うちはまだ関係ないと思っていたけど、実は対象になっていた」
社会保険の適用拡大をめぐって、そんなケースが増えています。
令和7年の年金制度改正により、今後は、
- 企業規模に応じて
- 段階的に
- 社会保険の対象者が広がっていきます。
中小企業の経営者・人事担当者が今から押さえておくべきポイントを整理しました。
そもそも「社会保険の適用拡大」とは?
健康保険・厚生年金保険(社会保険)は、もともとフルタイムで働く正社員等が加入するものでした。
しかし近年、パートなどの短時間労働者にも、段階的に適用対象が広げられています。
その目的は、
非正規で働く人が、医療保険や年金の保障を受けられるようにすることです。
対象となる「企業規模」の拡大スケジュール
ここが最も重要なポイントです。どの規模の企業が、いつから対象になるかを確認しましょう。
| 対象企業の従業員数 | 適用開始時期 |
|---|---|
| 51人以上 | 2027年9月まで(現行) |
| 36〜50人 | 2027年10月〜 |
| 21〜35人 | 2029年10月〜 |
| 11〜20人 | 2032年10月〜 |
| 10人以下 | 2035年10月〜 |
※「従業員数」:現在の厚生年金保険の加入対象者の数
判定は、原則として、従業員数の基準を常時(1年で6か月以上)上回ると見込まれる企業等が適用対象となります。
加入対象となるパート・アルバイトの要件
対象企業に該当した場合、
以下の要件をすべて満たすパート・アルバイトが、社会保険の加入対象となります。
(1)週の所定労働時間が20時間以上
- 就業規則や雇用契約書に記載された所定労働時間で判断します。
- 残業時間は原則含みません。
- ただし常態的に残業が発生している場合は算入される場合があります。
(2)学生ではないこと
- 高校・大学・短大・専修学校等に在学中の方は原則対象外です。
- ただし休学中、定時制・通信制の方などは加入対象になります。
(3)所定内賃金が月額8.8万円以上(2026年10月に撤廃予定)
(4)2か月を超えて雇用される見込みがあること
企業への影響:押さえておきたい2点
1. 社会保険料の事業主負担が増える
具体的な金額は、厚生労働省が提供する「社会保険料かんたんシミュレーター」で試算できます。
2. 従業員の手取りが変わる
- 毎月の保険料が控除されるため、手取り額が一時的に減ります。
- 一方で、傷病手当金、出産手当金、年金額の増加といったメリットもあります。
従業員への説明は丁寧に行いましょう。
企業として今からやるべきこと
- 自社が対象になる時期を確認する
- 対象になる従業員を洗い出す
- 保険料を試算する
- 現場責任者への共有
シフト調整や雇用契約の見直しは現場に直結する話題です。
「なぜ変わるのか」「何が変わるのか」を現場責任者が自分の言葉で説明できるよう、情報を噛み砕いて伝えましょう。 - 従業員への周知を準備する
加入対象になる従業員には、手取りへの影響とメリットの両方を説明できる資料を用意します。不安を感じる方も多いため、早めの周知が信頼関係の維持につながります。
厚生労働省の特設サイトには説明動画も用意されており、従業員向けの勉強会や個別説明の補助として活用できます。
支援制度の確認
適用拡大に向けた社内準備を支援するため、国の補助金・助成金制度が用意されています。
厚生労働省の特設サイトで最新情報を確認してみてください。
支援制度:保険料調整制度、キャリアアップ助成金、専門家活用支援事業など
まとめ
社会保険の適用拡大は、2035年までに段階的にすべての企業に広がります。
「うちはまだ先」と感じていても、準備は早いほど余裕が生まれます。
特に従業員への説明と保険料の試算は、時間をかけて丁寧に進めることが大切です。
執筆:埼玉県熊谷市の社会保険労務士・竹内由美子(中小企業の人と職場の課題をサポート)
自社の対象時期の確認や、従業員への説明方法でお困りの際は、お気軽にご相談ください。




