はじめに:「うちの社員は何も文句を言わない」
「うちの社員は不満も言わないし、みんな満足しているようだ」
そう思っていませんか?
ある社長は、そう信じていました。 会議でも、朝礼でも、社員は黙って頷くだけ。
「問題があれば言ってくるだろう」と思っていたのです。
しかし、ある日突然、優秀な課長が退職を申し出ました。
社長:「何か不満があったのか?」
課長:「…もう、ここでは成長できないと思いまして」
その一言で、社長は初めて気づいたのです。
静かな職場は、決して安心な職場ではないことを。
社員が「何も言わない」本当の理由
ハーバード大学のエドモンドソン教授によれば、人は「心理的安全性」がない職場では本音を言えないそうです。
社員が黙る5つの理由
- 「どうせ言っても変わらない」 → 過去に却下された経験
- 「自分の意見に自信がない」 → 若手・中堅は遠慮しがち
- 「言ったら怒られそうで怖い」 → 上司の反応を恐れる
- 「評価や雇用に響くのでは」と不安 → 波風を立てたくない心理
- 「我慢できなければ辞めればいい」 → すでに諦めモード
「何も言わない」のではなく、「言えない」環境なのです。
沈黙が招く3つのリスク
- 優秀な人材が突然退職(不満を言わずに去るため、原因が見えにくい)
- 指示待ち文化の定着(言っても無駄→自分で考えなくなる)
- 静かな崩壊が進む(経営層は気づかないまま、職場が冷えていく)
対話できる組織に変える3つのステップ
ステップ1:社長・上司が「聞く姿勢」を見せる
× 「何か問題あったら言って」(受け身)
◯ 「最近どう?何か困ってることない?」(能動的)
忙しくても、雑談の10分を取るだけで違います。忙しそうなオーラが、本音を遠ざけてしまうからです。
ステップ2:意見を否定せず、まず受け止める
社員が勇気を出して意見を言った時、最初の反応が全てを決めます。
× 「でも、それは無理だろう」
◯ 「なるほど、そう感じてたんだね」
※最初の5分は、ひたすら聞きます。それだけで、社員は「聞いてもらえた」と感じます。
ステップ3:小さくても良いから、変化を見せる
「じゃあ、この部分だけ試してみよう」 「来月、どうなったか教えて」
※小さな変化が、「言えば変わる」という信頼を生みます。
まとめ:静かな組織は、健全な組織ではない
社員が黙っている状態は、安心ではなく諦めのサインかもしれません。
放置すれば: 優秀な人材が突然辞める、指示待ち文化が定着する
向き合えば: 本音を言い合える組織になり、社員も会社も成長する
今日からできること
- 社員と雑談する時間を作る(まず10分でOK)
- 「最近どう?」と聞いてみる
- 自分に問いかける(社員は本音を言いやすいだろうか?)
完璧を目指す必要はありません。 まず、一人と話すことから始めてみませんか?
「何も言われない」今こそ、対話を始めるチャンスです。
執筆:埼玉県熊谷市の社会保険労務士・竹内由美子(中小企業の人と職場の課題をサポート)
「もしかしてうちの職場も当てはまるかも」と感じたら、早めにご相談ください。状況を整理し、必要に応じて改善策や対応方法をご提案いたします。





