「なんで、あの人だけ?」
昼休みの休憩室で、若手社員の佐藤がぽつりとつぶやいた。
「同じミスなのに、私だけ怒られた…」
隣にいた同僚は、苦笑いしながら言いました。
「まあ、部長のお気に入りかどうかで、対応が変わるからね」
佐藤は何も言えませんでした。でも、その日から心のどこかで思い始めました。
(頑張っても、意味がない)
社長には、見えていなかった
社長は、現場がうまく回っていると思っていました。
離職もない、大きなトラブルもない。だから、安心していました。
ところが、ある日、若手社員が立て続けに2人退職を申し出ました。
「理由は何だ?」
社長が聞いても、返ってくるのは決まって同じ言葉でした。
「自分の将来を考えて…」
でも本当の理由は、別にありました。
社労士が見た「静かな崩壊」
社長は社労士に相談しました。
「最近の若い子は、我慢が足りないんですかね」
社労士は、静かに問いかけました。
「評価基準は、誰でも説明できますか?」
「……え?」
「なぜあの人が昇進したのか。なぜその仕事を任されたのか。社員に説明できますか?」
社長は、答えられませんでした。
社員は「不公平」に一番敏感です
社労士は続けました。
上司は、部下を好き嫌いで評価している気がする
「これは、社員アンケートで最も多く出てくる不満の一つです」
「社員は、厳しさには耐えられます。忙しさにも耐えられます。でも、不公平には耐えられません」
「たとえば……」
- 同じミスでも、叱られる人と見逃される人がいる
- 気に入られている人だけ評価が高い
- 昇進や評価の理由を、誰も説明できない
こうした違和感に、社員は驚くほど敏感です。
そして、ある瞬間から職場にこんな空気が流れ始めます。
- 頑張っても意味がない
- どうせ、ひいきされる人が得をする
- こんな上司の下では成長できない
不満を言わなくなったときが、一番危険です。
なぜ、えこひいきは起こるのか
えこひいきの多くは、悪意ではありません。
- 評価基準が曖昧
- 管理職教育がない
- 判断が「なんとなく」になっている
つまり、上司個人の問題ではなく、会社の仕組みそのものにあります。
経営者が今すぐできること3点
社労士は、社長にこう伝えました。
「まずは、次の3つから始めてみてください」
- 評価の「物差し」を言葉にする
何をすれば評価されるのか。それを、社員に説明できるようにします。 - 管理職に「評価の訓練」をする
仕事ができる人が、良い上司とは限りません。公平に人を見る力を育てる必要があります。 - 社員の声が届く「逃げ道」をつくる
匿名アンケート、面談、外部相談窓口。「言っても大丈夫」という安心感が、組織を守ります。
まとめ:公平性は、最大の組織戦略
えこひいきは、社員のやる気を奪い、信頼を壊し、優秀な人材を辞めさせてしまいます。
しかし、逆に言えば、
基準が見える、理由が説明される、納得できる、
この3つがあるだけで、職場は大きく変わります。
公平性は、会社を守るための経営判断です。
もし今、「最近、社員の表情が暗い」「不満は聞こえないが、活気もない」
そう感じているなら、その原因は、仕組み不足もしれません。
小さな見直しが、失いかけた信頼を取り戻す第一歩になります。
執筆:埼玉県熊谷市の社会保険労務士・竹内由美子(中小企業の人と職場の課題をサポート)
「もしかしてうちの職場も当てはまるかも」と感じたら、早めにご相談ください。





