「また辞めた」社員が去る社長の3つの共通点

「また辞めた」

ある日、社長は人事担当を呼びました。

「田中が辞めるんだって?」
「はい。先週、退職届を出しました」
「え、田中が? 成績もいいのに」

社長は、驚きました。


退職面接の記録を見ると、田中の本音が書かれていました。

退職理由:

  • 「社長が約束を守らない」
  • 「自分には甘いのに、私たちには厳しい」
  • 「怒鳴られるのが怖くて、もう無理」

社長は、ショックを受けました。(給与や残業のことじゃないのか……)

社員が辞める、社長の3つの共通点

社長は、社労士に相談しました。
「田中が辞めてしまったんです。なんでですかね」

社労士は、過去の退職者たちを確認しました。
「実は、社員を次々と辞めさせてしまう社長には、共通点があります」

「共通点?」
「はい。3つです」

【共通点1】約束を守らない

「例えば、社長はこんなことをしていませんか?」

  • 「明日までにやる」と言って守らない
  • 自分は遅刻しても平気だが、社員の遅刻には厳しい
  • 社員のミスは叱るが、自分のミスは笑って済ます

社長は、ドキッとしました。「心当たり、あります」

「人は言動が一致しない人を信頼できません。特に、組織のトップがそうだと、『ルールは社長の気分次第』という空気が蔓延します」

社労士は続けました。
「社員の本音は、こうです。『社長の言うことは信じられない。どうせまた変わる』と」

【共通点2】感情的に怒鳴る・決断を避ける

「社長は、感情的に怒鳴ることはありませんか?」

社長は、黙りました。実は、よくありました。
「……些細なことでカッと怒鳴る一方、重要な決断は先送りし続けることがあります」

社労士は言いました。
「怒鳴る社長も、決断を避ける社長も、実は同じ根を持っています」

「それは何ですか?」

「失敗への恐怖です。
怒鳴る人は、感情的に反応して自分を守ろうとします。
決断を避ける人も、失敗を恐れて判断を先送りにします。
どちらも感情が理性に負けた状態なのです」

社労士は続けました。「社員の本音は、こうです」

  • 「何かあると怒鳴られるから、報告したくない」
  • 「社長が決めないから、プロジェクトが進まない」

社長は、心が痛みました。

【共通点3】一方的に話す、聞かない

「最後に、もう一つ。朝礼や会議が、1時間以上になっていませんか?」

社長は、思わず笑ってしまいました。
「完全にそれです。30分以上の説教をすることもあります」

「1時間以上の朝礼、30分以上の説教、それらは社員にとって最大のストレスになります。
たとえ内容が良くても、長すぎると伝わらなくなります」

「また、社員が話しかけても、途中で遮ったり、否定から入ったりしていませんか?」

「………」
社長は、また心当たりがありました。

「社員の本音は、こうです」

  • 「また始まった…今日は1時間コースかな」
  • 「何を言っても無駄。どうせ聞いてくれない」

「これが続けば、優秀な社員ほど、風通しの良い会社に転職していきます」

社長が実行したこと

翌週、社長は3つのことを実行しました。

1.約束を守る

  • 手帳に「社員との約束」を記録し始めました。
  • 守れなかったら、先に謝るようにしました。

2.感情的にならない

  • イラッとしたら「1、2、3」と心で数えるようにしました。
  • その間に「これは怒鳴るべきことか?」と自問するようにしました。

事例:
ある日、新人がミスをしました。前なら、すぐに怒鳴っていました。でも、「1、2、3…」と心で数え、落ち着いて新人に言いました。「ここ、ミスだね。次からどう改善する?」 
新人は、落ち着いて答えることができました。

3.朝礼を10分に短縮

  • 朝礼を10分に決め、タイマーをセットしました。
  • 伝えたいことは3つまでに絞りました。

そして、月1回、社員一人ひとりと15分話す時間をつくりました。
「最近、どう? 困ってることはない?」
社員たちは、初めて社長と個別に話す機会ができて、驚きました。


3カ月後、社員たちの顔が、少し明るくなりました。
朝礼が短くなったので、業務開始の時間に余裕ができました。

報告も増え始め、「社長、この件、相談したいんですけど」と、社員が積極的に声をかけるようになりました。

何より、退職した田中から、次のような連絡がありました。
「社長、最近、会社の雰囲気が変わったって聞きました」
「ああ、少しずつだけどな」
「……もし、まだ枠があれば、戻りたいんですけど」

社長は、嬉しくなりました。「本当か? ぜひ、戻ってきてくれ」

まとめ:社員が辞める理由は「給与」ではなく「社長」

社員が辞める理由の大半は、社長の日常的な行動パターンにあります。

  1. 約束を守らない
  2. 感情的に怒鳴る/決断を避ける
  3. 一方的に話す/聴かない

これらは「性格の問題」ではなく、仕組みで改善できる行動です。

完璧を目指す必要はありません。
まずはひとつ、今日から始めてみてください。


執筆:埼玉県熊谷市の社会保険労務士・竹内由美子(中小企業の人と職場の課題をサポート)

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