部下が「評価は上司の好き嫌い」と感じる理由と対策

はじめに:上司だって悩んでいる

管理職研修をしていると、よく出てくる言葉があります。

「正直、これまで好き嫌いで評価してたかもしれません」

そう、これはどの職場でも起きている“あるある”です。

上司も人間です。合う・合わない、話しやすい・頼みにくい……。
感情が入り込みやすいのが“評価”というものです。

しかし、その「ちょっとした感情のズレ」が、部下にとっては“信頼を失うきっかけ”になります。

1.「評価に納得できない」と部下はどう動くか

部下が「好き嫌いで評価された」と感じると、その瞬間から職場の空気が少しずつ変わり始めます。最初は、「たまたま低くつけられたのかな」と思う程度。でも、それが続くとこうなります。

  • 消極的になる:「言われたことだけやればいい」となる
  • 転職を考える:「努力しても報われない」と感じる
  • 同僚に不満を広げる:「どうせ上司の好き嫌いで決まる」と噂になる

この“好き嫌いフィルター”が広がると、上司への不信がチーム全体に伝染します。

結果、報告が減り、協力が減り、会話が減る。気づいたときには、職場の温度がすっかり下がっているのです。

2. 「納得できる評価」は、厳しくても信頼につながる

おもしろいことに、どんなに厳しい評価でも、納得感があれば不満は出ません。なぜなら人は、「感情」ではなく「理由」に納得したいから。

「今回はここが弱かった。次はこうすれば上がるよ」

このように、具体的な理由と改善策がセットであれば、部下は「自分を見てくれている」と感じます。

逆に、理由が説明できない評価は、どんなに点数が良くても“信頼”にはなりません。

3. 感情を排除する最強ツール:人事考課表の使い方

評価に感情を持ち込まないためには、仕組みでブレを防ぐしかありません。
その代表が、「人事考課表(評価シート)」です。

ただし、持っているだけでは意味がありません。大切なのは“どう使うか”です

考課表の運用3ステップ

  1. 期初に評価項目を共有する
     → 「どんな行動が評価されるのか」を部下と話し合う。
  2. 途中でも進捗面談を設ける
     → 年1回の評価では遅い。途中で方向修正できる仕組みに。
  3. 評価時には必ず具体例を挙げる
     → 「〇月の案件でこう動いたね」と、事実ベースで伝える。

こうした運用で、評価が「一方的なジャッジ」ではなく、“対話のツール”として機能します。

4. 管理職に必要なのは「感情管理スキル」

どんなに制度を整えても、最後に判断するのは“人”です。

だからこそ、管理職自身が自分の感情に気づく力を育てる必要があります。

次のような意識を持つだけでも、評価のブレは大きく減ります👇

  • 「この評価に、個人的感情が混ざっていないか?」と自問する
  • 他の管理職と評価を擦り合わせる会議を行う
  • 自分の評価理由を言語化し、客観的に振り返る

評価スキルとは、“他人を見る力”ではなく、“自分を見直す力”でもあるのです。

5.評価は「点数づけ」ではなく「信頼づくり」

評価は、結果を伝える場ではなく、「これからどう成長していくか」を共有する時間です。

  • できたことを言語化して認める
  • 改善点は、次のチャンスにつなげる形で伝える

その積み重ねが、部下のやる気と信頼を育てます。

まとめ

人は感情の生き物。意識しなければ、評価には“好き嫌い”が入り込みます。

だからこそ、

  • 仕組み(人事考課表)で公平性を担保し、
  • 意識(感情管理)で偏りを減らす。

そして、部下が「見てもらえている」と感じる評価こそが、信頼と成長を生む評価です。

感情ではなく、事実と対話で伝える評価を心がけたいですね。


執筆:埼玉県熊谷市の社会保険労務士・竹内由美子(中小企業の人と職場の課題をサポート)

「もしかしてうちの職場も当てはまるかも」と感じたら、早めにご相談ください。状況を整理し、必要に応じて改善策や対応方法をご提案いたします。

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