はじめに:どこの会社にもいる「支える人」
- 営業が仕事を取ってくる。
- 制作や開発、サポートの人たちがそれを形にする。
- お客様に届いて、会社の信頼になる。
この流れがうまく回ってこそ、組織は成り立ちます。
ところが、現実には「売る人だけが評価される」会社が少なくありません。
- 営業には賞与があるのに、内勤にはない。
- リーダー的な仕事をしても、給与は上がらない。
それでも「うちは営業会社だから」で片づけられる。
仕事は回しても、心が回らなくなる瞬間です。
1. 「営業 vs 内勤」ではなく、「見える成果 vs 見えにくい貢献」
問題は、職種の違いではありません。“成果の見え方の違い”です。
営業の数字は誰の目にもわかりやすい。
でも、納期を守るために調整した人、品質を上げるために何度も修正した人、お客様の不安を丁寧にフォローした人、そうした貢献は数字になりにくい。
だからこそ、評価から漏れやすい。
しかし、本当に会社を支えているのは、その「見えにくい努力」の積み重ねです。
2. 「がんばっても報われない」は、組織のサイン
「リーダー的なことは求められるのに、対価は変わらない」
この状態が続くと、人は静かに離れていきます。
やる気よりも諦めが勝ってしまうのです。
しかも怖いのは、辞める人が多くなる前に、残っている人の心が先に離れること。
会社の中で「もう言っても無駄だ」と思われたら、その瞬間から、チームはゆっくりと止まっていきます。
3. 組織が変わるきっかけは「評価の見直し」から
健全な会社は、売上を生む人と同じくらい、売上を支える人を大切にします。
- 営業の受注率を上げた提案資料の制作者を評価する
- 顧客満足を守るサポート担当を評価する
- プロジェクト全体の成果を「チーム評価」として反映する
つまり、チーム全体で生み出す成果の流れをどう見える化するかが、これからの評価制度の鍵です。
「営業至上主義」は古い成果主義の名残です。
これからの時代に必要なのは、“チーム成果主義”なのかもしれません。
4. 面談では「不満」ではなく「貢献」で話す
「もうダメだ」とあきらめる前に、面談の場では、自分の仕事を“貢献の言葉”に変えてみてください。たとえば、
「自分たちの納品体制があるからこそ、営業が安心して契約を広げられると思っています。
だから、その貢献も評価に反映してもらえたら嬉しいです。」
感情ではなく、事実とつながりで話す。それが一番説得力があります。
会社は「言わない人=満足している人」と見なします。だから、何度でも言葉にすることが大切です。
5. 経営層への提言:「支える人」を失えば営業も立たない
営業が輝くのは、支える人がいるから。
支える人が動けるのは、会社が信頼してくれるから。
この循環を失えば、どんなに営業が強くても、組織は長く続きません。
経営とは、数字を伸ばすことではなく、支え合う仕組みを作ること。
“支える人”を軽んじる会社は、やがて“支えそのもの”を失うのです。
6. 士業業界にもある「丸投げ型の構造」
これは企業だけの話ではありません。
社労士や税理士の世界でも、「先生が仕事を取ってくる → スタッフに丸投げ → 責任は取らない」
というケースをよく耳にします。
こうした組織では、スタッフが疲弊し、離職が続き、最終的にクライアントの信頼も失われ、契約解除にいたります。
“支える人を軽んじる組織”は、必ず支えを失います。
まとめ
「営業が主役」ではなく、「全員がつくる成果」こそ主役。
支える人を評価する会社は、信頼が長続きします。
評価されない職場は、人も信頼も少しずつ離れていきます。
社員へ: 自分の貢献を言葉にして伝えよう。
上司へ: 行動と支援も評価に入れよう。
会社へ: 見えない貢献を見える化しよう。
執筆:埼玉県熊谷市の社会保険労務士・竹内由美子(中小企業の人と職場の課題をサポート)
「もしかしてうちの職場も当てはまるかも」と感じたら、早めにご相談ください。状況を整理し、必要に応じて改善策や対応方法をご提案いたします。