はじめに:優しさから始まる特別扱い
「この部下には毎日でも会いたい」 ある社長がそう言いました。
その“特別な人”は、資格を持つパート社員。
確かに仕事はできるようですが、賞与は他の社員より明らかに多かったです。
「この人に辞められたら困るから」 社長はそうも言っていました。
悪気はありません。むしろ、“感謝と信頼の証”として特別扱いしているのです。でもその優しさが、職場全体の空気を静かに歪めていくことがあります。
よくある「えこひいき社長」の特徴
中小企業では、社長の判断が会社のルールになることも少なくありません。それが強みでもあり、同時にリスクにもなります。
「えこひいき社長」には、こんな共通点があります。
- 感情で動く(“好き”や“信頼できる”で判断)
- 成果より“気分”で評価してしまう
- 特定の人に対して、異常に保護的
- 「他の人も見ている」という意識が薄い
つまり、悪気はゼロ。だが影響は絶大。
社長が「ちょっとしたご褒美」のつもりでも、周囲には「不公平」「ひいき」「線引きのない職場」と映ってしまうのです。
「辞められたら困る」が引き起こす悪循環
特定の人に依存するほど、社長は判断を誤りやすくなります。
その人のミスには甘く、他の社員には厳しく。不満が広がっても、「だって、あの人がいなきゃ困る」と正当化してしまう。
しかし、組織は誰か一人に頼らない仕組みがあってこそ強くなります。
もし「この人が辞めたら困る」と思うなら、優遇するのではなく、分担と育成に力を入れるべきです。
特別扱いではなく、“誰が抜けても回る体制”を整える。それが本当の危機回避であり、会社を守る力になります。
社員の気持ちは意外と冷静
現場の社員は、意外なほど社長の行動を見ています。
- 「なんであの人だけ?」
- 「私たちも言えばもらえるの?」
- 「あの人がいるから正直やりづらい」
こうした“静かな不満”が積み重なると、やがて会社全体の信頼が下がっていきます。特別扱いされた本人さえも、「自分だけ優遇されている」と感じて居づらくなることがあるのです。
まとめ:優しさはルールの中で発揮する
社長のえこひいきは、結局のところ「人を大切にしたい」という気持ちの表れ。でも、その思いやりを感情ベースで続けると、信頼ではなく不公平が残ります。
だからこそ、優しさはルールの中で。
感謝はお金ではなく「言葉」で。
そして、“この人が辞めたら困る”ではなく、“誰がいても安心して働ける職場”を目指すこと。
それが、長く続く会社の本当の優しさです。
執筆:埼玉県熊谷市の社会保険労務士 竹内由美子(中小企業の人と職場の課題をサポート)
「もしかしてうちの職場も当てはまるかも」と感じたら、早めにご相談ください。
状況を整理し、必要に応じて改善策や対応方法をご提案いたします。
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