えこひいき社長の心理。優しさが職場を壊す

はじめに:「この人が辞めたら困る」から始まる職場の歪み

「この人が辞めたら困る」
経営者なら、一度はそう思ったことがあるのではないでしょうか。

  • 話が早い
  • 任せても安心
  • 自分の考えを分かってくれる

気づけば、その人だけに仕事が集まり、その人の意見だけが通るようになる。

最初は感謝だった。でも、いつの間にかそれは特別扱いに変わっていく。

そして、職場の空気が、少しずつ変わり始める。

社員は見ている

えこひいきは、隠せません。

  • 同じミスなのに、叱られる人と叱られない人がいる
  • 評価や昇給の理由が、説明されない
  • 「どうせ、あの人の意見が通る」という諦め

そして、社員は心の中でこう思っています。

「頑張っても意味がない」
「公平じゃない」
「ここでは成長できない」

この空気が広がった瞬間、組織は静かに弱っていきます。

えこひいきは「悪意」ではありません

大切なのは、えこひいき社長の多くは悪い人ではないということです。

むしろ、

  • 人を大切にしたい
  • 感謝を伝えたい
  • 裏切られたくない

そんな不安や孤独の裏返しであることがほとんどです。

「この人がいなくなったらどうしよう」
その恐れが、特定の人への依存を生みます。

でも、依存からは、信頼は生まれません。
信頼とは、特定の個人に依存しなくても機能する体制があってこそ成立するものだからです。

優しさが「仕組み」になっていないと起きること

特定の人に頼る組織では、

  • 仕事が属人化する
  • 他の社員が育たない
  • 意見が出なくなる
  • 優秀な人から辞めていく

残るのは、「諦めた人」か「守られている人」だけ。
これは、人事の問題ではなく、経営リスクです。

「えこひいきされている側」も傷ついている

えこひいきの問題というと、「冷遇される側」の不満に目が向きがちです。

しかし、見落とされやすいのが、「えこひいきされていると思われた側」の負担です。

本人はただ、

  • 任された仕事をきちんとこなした
  • 責任を持って結果を出した
  • 評価に値する行動をした

それだけだったとしても、周囲からは、

  • 「上司のお気に入り」
  • 「ひいきされている人」
  • 「ズルをしている」

と見られてしまうことがあります。

その結果、

  • 無視される
  • 嫌味を言われる
  • チームから距離を置かれる

といった二次被害が起きます。

評価の理由が見えない職場では、えこひいきは「評価された人」と「されなかった人」双方を分断するのです。

だからこそ経営者には、「誰を評価したか」ではなく、「なぜ評価したのか」を説明できる仕組みが求められます。

例えば、

『彼が頑張っているから』ではなく、『この数値を達成したから』と、あえて感情を抜きにした言葉で全社員に発表するなどです。

それが仕組みの第一歩です

感情は変えられない。だから「仕組み」にする

えこひいきをやめようと決意しても、人の感情は簡単には変わりません。
必要なのは、仕組みでブレを防ぐことです。

  • 感謝は、特定の人だけでなく全員に言葉で伝える
  • 「この人がいなくても回る」体制を作る
  • 評価は「誰が」ではなく「何をしたか」で決める

本当の優しさとは、誰か一人を守ることではなく、みんなが安心して働ける状態をつくることです。

えこひいき社長は、「人を大切にしたい」気持ちが強い人です。
だからこそ、その優しさを仕組みに変えられたとき、組織は一気に強くなります。

【セルフチェック】あなたの会社大丈夫?

  1. 特定の社員にばかり仕事が集中している
  2. 同じミスでも、人によって対応が違う
  3. 評価基準を明文化していない
  4. 「この人がいないと困る」と日常的に感じる
  5. 他の社員が意見を言わなくなった

3つ以上当てはまる場合、 えこひいき構造が生まれているかもしれません。

まとめ

  • えこひいきは、善意から生まれることが多い
  • しかし、放置すれば組織を確実に壊す
  • 優しさは「感情」ではなく「仕組み」で守る

「この人がいないと困る」そう感じたときこそ、組織を見直すタイミングかもしれません。

安心して働ける職場をつくる。
それが、真のリーダーシップの形ではないでしょうか。

編集後記:新年あけましておめでとうございます

2026年、新しい年が始まりました。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

今年の目標の一つに、売上の土台になる『信頼関係』の点検を入れてみてはいかがでしょうか。

現場と経営の両方を見てきた立場として、埼玉県熊谷市から、今年も職場づくりを静かに支えていきたいと思います。


執筆:埼玉県熊谷市の社会保険労務士 竹内由美子(中小企業の人と職場の課題をサポート)

「もしかしてうちの職場も当てはまるかも」と感じたら、早めにご相談ください。

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