「最近の若者は、我慢が足りない」
ある日、社長の山田は、幹部会議で愚痴をこぼしました。
「また若手が辞めた。3人目だ。最近の若者は、我慢が足りないんじゃないか?」
幹部たちは、黙って頷きました。
半年後。優秀だった若手は、次々と辞めていきました。
残ったのは、「言われたことしかしない人」だけ。
山田は、人事担当に聞きました。
「なんでみんな辞めるんだ?」
「……退職理由、見ますか?」
「ああ」
退職理由:
- 「会社の方向性が不明確」
- 「将来の見通しが持てない」
- 「社長が何を考えているのかわからない」
山田は、驚きました。「我慢が足りない、じゃないのか……?」
組織を壊す社長の3つの特徴
山田は、社労士に相談しました。「若手が辞めていくんです。どうすればいいですか?」
社労士は、3つの特徴を指摘しました。
1. 会社の方向性を語らない
「社長、社員に会社のビジョンを伝えていますか?」
「……頭の中にはあるけど、特に話してないな」
「それでは『ない』のと同じです」
優秀な社員は、『社長が何を考えているのかわからない』と感じるとき、モチベーションが低下し、離職を考え始めます。
2.方針がコロコロ変わる
「社長、方針、よく変わりますよね?」
「……そうかもしれない。思いついたら、すぐ言っちゃうから」
「朝令暮改、気分で指示が変わる。これは、現場を混乱させます」
社員は「次は何を言われるのだろう」と様子を伺い、挑戦よりも防御に回ってしまいます。
3.問題を社員のせいにする
「社長、『やる気がないのは社員の問題だ』と思っていませんか?」
山田は、ドキッとしました。「……思ってる」
「それは、無意識のうちに責任を放棄しています」
リーダーが責任を手放した瞬間、信頼という土台が崩れ、優秀な人から辞めていきます。
「自分が空気を悪くしていたのかもしれない」
山田は、気づきました。
「自分が空気を悪くしていたのかもしれない」
(若者が悪いんじゃない。俺が悪かったんだ)
信頼を取り戻す3ステップ
それから、山田は3つのことを変えました。
ステップ1:自分の思いを言葉にする
次の朝礼で、山田は社員に語りました。
「みんな、今まで方向性を示してこなくて、すまなかった」
「俺がこの会社をやっている理由は、お客様に喜んでもらいたいから」
「10年後、地域で一番信頼される会社にしたい」
「そのために、みんなの力を貸してほしい」
社員たちは、真剣に聞いていました。
ステップ2:小さな約束を守る
「来週までに、新しい提案制度を作る」
山田は、本当に作りました。
「金曜は定時退社」
山田は、自分も定時で帰りました。
その一つ一つが、社員に「この会社は信頼できる」と感じさせる結果となりました。
ステップ3:社員の声を聞く勇気を持つ
山田は、若手と面談しました。
「うちの会社、どこに向かっていると思う?」
若手の佐藤が答えました。
「正直、今まではわからなかったです。でも、今日の朝礼で、社長の思いがわかりました」
「ありがとう。これからも、意見聞かせてくれ」
3ヶ月後、若手が戻ってきた
3ヶ月後。辞めた若手の一人、田中から連絡がありました。
「社長、最近、会社の雰囲気が変わったって聞きました」
「ああ、少しずつだけどな」
「……もし、まだ枠があれば、戻りたいんですけど」
山田は、嬉しくなりました。「本当か? ぜひ、戻ってきてくれ」
まとめ:社員は社長の鏡
職場の空気が悪くなるとき、多くの場合トップが迷っています。
社員は社長の鏡。社長が前を向けば、社員も前を向きます。
信頼される社長とそうでない社長の差は、能力ではありません。
語るか・聞くか・動くか。それだけです。
今日から始める一歩は、
- 自分の考えを言葉にして伝える
- 小さな約束を守る
- 社員の声を聞く勇気を持つ
それだけで、会社は少しずつ動き始めます。
執筆:埼玉県熊谷市の社会保険労務士・竹内由美子(中小企業の人と職場の課題をサポート)
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