はじめに:信頼がないまま厳しくすると、関係は壊れる
「なんでこんなこともできないんだ!」
新人や若手に強く言った翌日から、目も合わせてくれなくなった…。そんな相談を、職場でよく耳にします。
一見、指導不足のように思えますが、実は多くのケースで問題の根本は「信頼関係の欠如」です。
信頼関係ができる前に叱っても、響かない
どんなに正しいことを言っても、相手が「この人は自分を見てくれていない」と感じた瞬間、心のシャッターは閉まります。
教育の基本は、「教える」より先に「つながる」こと。
まずは「この人は自分を認めてくれている」と感じてもらうことが大切です。信頼がなければ、厳しさは届かず、ただの圧になります。
事例:信頼が育つ前に「期待」だけが先走ったケース
ある上司は、入社2年目の女性社員に大きな期待を寄せていました。「この子なら伸びる」と信じ、あえて厳しい指導を重ねていたのです。
ところが彼女の心の中は違っていました。
「上司としては尊敬しているけれど、人としては正直苦手」
「何をしても注意される。完璧じゃないと認めてもらえない」
そんなプレッシャーの中で働き続けたある日、彼女は突然「もう辞めたいです」と切り出しました。
上司に悪気はなく、むしろ育てたい一心でした。
しかし、信頼関係ができる前の「厳しさ」は、相手には「否定」として届くのです。
上司は後にこう振り返りました。
「もっと“期待している”と伝えればよかった」
「彼女の努力を認めるより、欠点ばかり見ていた」
人は“叱られて変わる”より、“信頼されて応えようとする”ときに最も成長します。
最初は「最低限でOK」の気持ちで見守る
教育の出発点は「完璧を求めない」ことです。まずは 「最低限の仕事をしてくれればありがたい」 くらいの気持ちで。
たとえば、
- 出社して挨拶ができたらOK
- 頼んだことを忘れずにやってくれたら花丸
そんな小さな成功を一緒に積み重ねるうちに、「この人の期待に応えたい」という気持ちが芽生え、行動が変わっていきます。
まとめ:厳しさは信頼の上に成り立つ
人は叱られて育つのではなく、信頼されて伸びるもの。
焦らず、もう一度振り出しに戻って、信頼を積み上げていく。それが、最も早く、そして確実に人を育てる方法です。
執筆:埼玉県熊谷市の社会保険労務士 竹内由美子(中小企業の人と職場の課題をサポート)
「もしかしてうちの職場も当てはまるかも」と感じたら、早めにご相談ください。
状況を整理し、必要に応じて改善策や対応方法をご提案いたします。
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