上司のよくある問題
「何度言っても同じミスをする」
「注意したはずなのに、また繰り返している」
管理職の方から、最も多く聞く嘆きです。
多くの上司は、心の中でこう思っています。
- 言うべきことは言った
- これ以上、どうしろというのか
- 直らないのは本人の問題では?
しかし、現場を見ていると、「注意したのに直らない」のではなく、「注意が行動に変わる設計になっていない」だけ、というケースがほとんどです。
注意はゴールではありません。
行動が変わって、初めて意味を持つのです。
注意しても直らない、3つの本当の理由
理由① 注意が「抽象的」すぎる
「ちゃんとやって」「気をつけて」「しっかりして」
こうした言葉は、上司にとっては便利ですが、部下にとっては行動に変換できない言葉です。
部下の本音はこうです。
「何を、どこまでやれば「ちゃんと」なんだろう…」
伝えたつもりでも、実際には何も伝わっていない。これが最初のつまずきです。
理由② 上司と部下の「基準」が違う
上司は「報告が遅い」と感じている。
でも部下は「報告しているつもり」。
このズレは、能力ややる気の問題ではありません。
判断基準を共有していないだけです。
部下は悪意なく、「できている」と思って行動しています。
ここをすり合わせない限り、注意は何度しても空回りします。
理由③ 注意したあとが「放置」されている
注意したあと、
- できたかどうか確認しない
- 変化を一緒に振り返らない
- そのまま次の業務に流れる
こうなると、部下はこう受け取ります。「言われたけど、結局どうでもよかったのかな?」
注意→放置は、改善ではなく「なかったこと」になります。
行動を変えるための、3つのステップ
ステップ① 行動を具体化する
✕「報告をちゃんとして」
〇「この業務が終わったら、15時までにメールで報告してください」
ポイントは3つだけです。
- 何を
- いつまでに
- どうやって
これが揃うと、部下は初めて動けます。
ステップ② 「問いかけ」で振り返る
注意のあとは対話。
- どこまで意識できた?
- やってみて難しかった点は?
- 次は何を変えられそう?
「言う」より「問う」。
部下が自分の言葉で語り始めたとき、行動は定着します。
ステップ③ 事実を見える化する
感情ではなく、数字や記録で見る。
- 報告時刻
- ミスの件数
- 実施した改善行動
事実が見えると、
- 言い訳が減る
- 改善が実感できる
- 上司も冷静でいられる
「叱らなくて済む管理」が可能になります。
それでも変わらないとき
ここまでやっても変わらない場合、責める前に考えるべき視点があります。
① 仕組みで防げないか
チェックリスト、ダブルチェック、業務フローの見直し。
個人の頑張りに頼らない設計にします。
② 適性の問題ではないか
この仕事が合っていない可能性もあります。
配置転換は「逃げ」ではなく、最適化です。
③ 評価に正しく反映する
改善が見られない場合は、事実をもとに評価します。
感情ではなく、ルールとして扱うことが大切です。
まとめ
部下の行動は、注意した回数ではなく、仕組みの質で変わります。
今日からできることは3つだけ。
- 曖昧な注意をやめ、行動を具体化する
- 注意したあと、必ず振り返る
- 感情ではなく、事実で判断する
注意は「言って終わり」ではありません。「言ってから、設計するもの」です。
そこを変えた瞬間、上司も、部下も、驚くほど楽になります。
執筆:埼玉県熊谷市の社会保険労務士・竹内由美子(中小企業の人と職場の課題をサポート)

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