はじめに
人が辞める職場には、必ず前触れがあります。
それは、大きなトラブルではなく、静かな変化として現れます。
・発言が減る
・質問がなくなる
・表情が消える
それは「問題がない」のではなく、
「もう言わなくなった」だけなのかもしれません。
1. 人が辞める職場に必ずあるサイン
退職者が出ると、よく聞く言葉があります。
「突然辞めた」
「理由が分からない」
でも本当は、サインは出ていました。
これは単なる「性格」の問題ではなく、「どうせ言っても変わらない」という諦めです。
2. スタッフが黙るのは「防御」
人は、すぐには辞めません。まず、話すのをやめます。
多くの場合は、
- 話を遮られた
- 意見を否定された
- 結局何も変わらなかった
その積み重ねの先に、沈黙があります。
そして辞めるときには、もう心は遠くにあります。
3. 離職は最後のSOS
離職はトラブルではありません。
組織の仕組みに無理が出ているサインです。
- 属人化
- 特定の人への依存
- 相談の通り道がない
- 経営者が一人で何役も担う体制
こうした職場では、優秀な人ほど先に辞めていきます。
それは、我慢が足りないからではありません。
優秀な人は、
「ここで声を上げても変わらないか」「この先、良くなる余地があるか」
を冷静に見ています。
そして、改善の見込みがないと判断したとき、無理に耐え続けることを選びません。
一方で、責任感が強く、周囲に気を遣える人ほど、「自分が頑張れば何とかなる」と踏みとどまり、最後まで声を上げられずに疲弊していきます。
つまり、先に辞めるのは状況を正しく判断できる人です。これは個人の問題ではなく、組織の構造が限界に近づいているサインなのです。
4. 解決策は、頑張りではなく「仕組み」
これは「誰かが悪い」話ではありません。問題は、人ではなく仕組みです。
- 声が、ちゃんと上に届く通り道があるか
→ 例:月1回の1on1、匿名の意見箱、第三者への相談窓口 - 誰か一人に背負わせない仕組みになっているか
→例:業務のマニュアル化、複数人での対応体制 - 外の目を入れる逃げ道を残しているか
→例:社労士や専門家への相談、外部研修への参加 - 「あの人がいないと回らない」仕事を放置していないか
→ 例:属人化した業務の洗い出し、引き継ぎ体制の整備
5. あなたの職場は大丈夫? セルフチェック(15項目)
10個以上当てはまる場合は、スタッフ離職が今すでに起きています。
- ミーティングでスタッフがほとんど話さない
- 報告・相談が以前より減った
- 新人を育てる仕組みがない
- 権限委譲が機能していない
- 「誰も代われない業務」を抱えている人がいる
- 外部(第三者)の意見に抵抗感がある
- 部下の意見や相談に対して、つい感情的になることがある
- 言いたいことが言えない職場になっている
- 優秀な人ほど辞めていく
- 経営者が忙しすぎて話を聞く余裕がない
- スタッフが何を考えているか正直わからない
- 「今は無理」「時間がない」が口癖になっている
- 新人が続かない
- 人が増えても経営者の業務は減らない
- 休みの取得や働き方に不満が出ている
1〜5個:注意(予兆が見え始めている)
6〜10個:職場は静かにSOS(早急な対応が必要)
11個以上:離職の連鎖が始まっている可能性大(すでに離職が起きている段階)
さいごに
「急に辞めた人」はいません。ただ、気づけなかっただけです。
沈黙は、最も分かりにくいSOS。
でも、今ならまだ間に合います。
仕組みを変えれば、職場は必ず変わります。
経営者が一人で抱え込まなくても、組織は立て直せます。
執筆:埼玉県熊谷市の社会保険労務士・竹内由美子(中小企業の人と職場の課題をサポート)
「もしかしてうちの職場も当てはまるかも」と感じたら、早めにご相談ください。状況を整理し、必要に応じて改善策や対応方法をご提案いたします。




