中小企業の採用で確認する「意外なポイント」

はじめに:なぜ中小企業の採用がうまくいかないのか?

「なかなか応募が来ない」「せっかく採用してもすぐ辞めてしまう」

中小企業の採用相談でよく聞く悩みです。

多くの企業は、原因を待遇・知名度・求人の書き方に求めがち。
しかし、採用の成功は、入社前ではなく入社後の育て方にあるかもしれません。

教育担当者の指導スタイル

ある企業では、新人が3名連続で1か月以内に辞めてしまいました。
教育担当者はベテランで高いスキルを持つ優秀な社員。
しかし新人の声はまったく違うものでした。

  • 「ミスするたびに前任者と比べられた」
  • 「完璧を求められて息が詰まった」
  • 「質問がしづらく、相談できなかった」

教育担当者は丁寧に教えているつもり
しかし、新人には、厳しすぎる指導として届いていたのです。

なぜ優秀な教育担当者ほど、新人が続かないのか?

① 基準が高すぎる

優秀な人ほど「これくらいできて当然」と思いがち。
新人は自信を失い、萎縮します。

② 完璧主義が負担になる

ミスを細かく指摘されるたびに、「また怒られる」という不安が増えます。

③ 過去の成功体験を押し付ける

自分が厳しく育てられた経験を正解と思い込むと、新人は苦しくなります。

新人が続かない理由は「やる気がない」のではなく、

  • 「どうすればいいか分からない」
  • 「言いづらい空気」

に置かれていることが多いのです。

その他の見落としがちな採用課題

  1. 求人のハードルが高すぎる
    「即戦力歓迎」ばかり掲げて応募者が遠ざかる。
  2. 社風を伝えないまま採用する
    仕事内容だけ伝えて雰囲気を伝えず、入社後に「思っていたのと違う」と離職。
  3. 面接官の基準がバラバラ
    スキル重視と人柄重視が混在し、ミスマッチが発生。

採用を成功させる“入社後”の具体策

1.教育担当者の指導スタイルを整える(最重要)

新人が安心して質問できるか、萎縮していないかを必ず確認します。

OK指導の例(新人が安心できる声かけ)

  • 「最初はこれで十分だよ」
  • 「ここまでできたのは成長だね」
  • 「わかりにくい説明だったかな?もう一度伝えるね」

教育担当者に伝えるべき視点

  • 新人は「できなくて当たり前」
  • 小さな成長を認める
  • 失敗は叱るのではなく学ぶ機会にする

2.ポテンシャル採用を重視する

求人文には、「未経験歓迎」「一緒に成長したい方」という文言を必ず入れる。

3.社風・働き方を明確に伝える

写真、社員のコメント、1日の流れなどを掲載し、「雰囲気のミスマッチ」を減らす。

4.面接基準を統一する

価値観、学ぶ姿勢、コミュニケーションの基準を明文化し、面接官全員が同じ視点で評価できるようにする。

適性のミスマッチにも配慮する

もし、知識・経験を積ませても改善が見られない場合、
それは本人の怠慢ではなく 適性のミスマッチ かもしれません。

得意分野に合わせて業務を調整し、必要であれば配置転換を検討する。
これは本人の価値を否定するものではなく、適材適所を見つけることです。

まとめ:採用は「続けられる環境をつくる」こと

採用の問題の多くは、「入社前」ではなく 入社後の育て方 にあります。

新人が続く職場をつくるためには、次の4つが欠かせません。

  • 教育担当者の指導スタイルを整える
  • 新人が安心して質問できる空気をつくる
  • 小さな成長を認める
  • 適性を見ながら業務を調整する

採用とは、ただ人を集めることではなく、入社した人が育ち、根付き、活躍できる環境をつくることではないでしょうか。


執筆:埼玉県熊谷市の社会保険労務士・竹内由美子(中小企業の人と職場の課題をサポート)

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「もしかしてうちの職場も当てはまるかも」と感じたらご相談ください。状況を整理し、必要に応じて改善策や対応方法をご提案いたします。

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