はじめに
「そのやり方、こうするともっと良くなると思うんですが…」
そう提案した瞬間、返ってくるお決まりの一言。
「前任者がこうやっていたから」
この言葉が出ると、どんなに効率化できそうでも、そこから一歩も前に進みません。
「前任者が…」の裏側にある3つの心理
- 考えたくない(思考停止)
「前任者が…」と言えば、深く考えずに済む - 責任を負いたくない(責任回避)
「私のやり方ではありません」「前任者がそうやっていたので」と責任回避ができる - 変えることへの恐怖(過去の挫折)
以前、改善提案が却下されたり、変更が失敗したりした経験があると、 「前任者通りが最も安全」という心理が生まれ、それ以上提案しなくなる
「前任者通り」を放置するとどうなるのか?(リスク3つ)
- 無駄な作業が増え続ける
負担が増える一方、効率は一切上がらない。 - 社員が考えることをやめる
受け身が定着し、自律性がなくなる。 - 時代の変化に追いつけない
非効率なやり方が残り続け、競争力が落ちる。
管理職として、この状況は見過ごせないのではないでしょうか。
対応策(管理職ができる3ステップ)
1.「なぜ?」を一緒に掘り下げる(目的の見える化)
「前任者が…」と言われたら次の質問を。
- 「この作業、何のためにやっているの?」
- 「誰が使う資料?」
- 「やめたら何が困る?」
多くの場合、理由を説明できません。
惰性で続いていることが浮き彫りになります。
※ただし、法令や品質保証に関わる「変えてはいけない手順」もあるので、まずは「なぜ必要なのか」を確認することが大切です。
2.小さな改善から成功体験を作る
いきなり大きな改善を求めると反発されるので、最初は小さな成功を積み上げていきます。
- 「この報告書、2枚を1枚にまとめられない?」
- 「確認作業、チェックリスト化してみない?」
- 「会議、30分に縮められそう?」
そして改善ができたら必ず、「あなたの工夫で15分短縮できました。ありがとう。」
この一言が、次の改善につながります。
【成功例】
ある会社では、週次報告書のフォーマットを社員提案で見直したところ、
作成時間が 1時間 → 20分 に短縮しました。
その社員を朝礼で表彰したことで、改善提案歓迎の文化が社内に広がりました。
3.トップが文化を作る
たとえば、次のような問いかけをトップが投げかけると効果的です。
- 「前任者のやり方は尊重しつつ、もっと良くできないか考えよう」
- 「この会議、本当に毎週必要?」
- 「この報告書、誰が読んでる?」
- 「不要ならやめよう」
トップが“変えていいんだよ”という空気を作れば、社員も主体的になります。
まとめ:「もっと良くするなら?」を合言葉に
「前任者がこうやっていた」という言葉は、思考停止・責任回避・諦めの象徴です。
しかし、ほんの少しの問いかけと小さな改善は、職場を大きく変えていきます。
今日からできること3つ
1.「なぜそうするのか」を一緒に掘り下げる
2.小さな改善を積み重ね、成功体験を作る
3.トップが「前任者通り」を疑う文化を示す
編集後記
私は過去に、思考停止の会社で、このような経験をしました。
「なぜそんなやり方をするんですか?」「こうやるのはどうですか?」と質問しても、 「前任者がそうやっていたから」「うちの部署は前任者通りにやればいい」という答えばかりでした。
その時の無力感が、この記事を書くきっかけになりました。
執筆:埼玉県熊谷市の社会保険労務士・竹内由美子(中小企業の人と職場の課題をサポート)
「もしかしてうちの職場も当てはまるかも」と感じたら、早めにご相談ください。状況を整理し、必要に応じて改善策や対応方法をご提案いたします。





