経営者の「当たり前」は、社員の「当たり前」ではない
「もっと会社のことを考えて動いてくれたらなあ…」
経営者なら、一度はそう思ったことがあるはずです。
でも、ちょっとお待ちください。
あなたが今の立場になるまでの道のりを思い出してみましょう。
- 上司に言われなくても数字を見ていた
- 経営書を読んで「なるほど」と唸っていた
- 「この判断は会社にとってプラスか?」と常に考えていた
…そう、あなたは最初から“会社目線”で生きてきた人ではありませんか?
でも残念ながら、社員の9割は違います。
多くの人にとって会社は、働く場所。
自分の仕事をきちんとこなすことが責任であり、全体を考えるのは別次元の話なのです。
これは、やる気がないわけでも能力が低いわけでもなく、ただ単に「情報が見えていない」だけ。
会社目線社員を育てるのは経営者の仕事なのです。
経営者がすべき5つのこと
1.会社の数字を見せる
「黒字って言ったら昇給を求められるかも…」
「赤字って言ったら不安になるかも…」
──そう思って数字を隠していませんか?
数字を隠す限り、社員は自分の給料の裏側を理解できません。
月次の売上、利益、人件費の割合をざっくりでも共有してみましょう。
「この利益が出るから、来月の投資ができる」そう説明できた瞬間、社員の目線が変わります。
2.「なぜこの判断をしたのか」を話す
経営者にとって決断は日常でも、社員にとっては「いきなり方針が変わった」と感じる出来事です。説明がなければ「また思いつきで決めたな」と誤解されます。
たとえば経費削減なら、
「売上が10%落ちていて、このままだと赤字。だから〇〇を抑えます。給与には影響しません」
──これだけで納得度は格段に上がります。
3.対話の場をつくる
「年1回の全体会議で十分」では足りません。
- 月1の30分ミーティングで数字を共有
- 週1のチーム振り返りで課題を話す
- 3か月に1回の面談で方向性を合わせる
──このリズムが“会社目線”を習慣にします。
4.小さな提案を実現する
社員が「どうせ何も変わらない」と思った瞬間、改善力は止まります。
付箋やチャットで出た小さなアイデアを即実現してみましょう。
「〇〇さんの提案で作業時間が30分短縮できました!」
──この一言が、会社を変える空気をつくります。
5.「会社目線」で考えた人を評価する
行動が変わらない最大の理由は、評価されないから。
「コスト意識を持って業務を改善した」
「チーム全体を考えて動いた」
こうした行動を表彰・昇給対象にします。
その積み重ねが、全体の意識を底上げします。
まとめ
「社員が変わらない」と嘆く前に、経営者がどれだけ情報を開き、理由を伝え、対話し、評価しているかを見直してみることをお勧めいたします。
社員は鏡です。
経営者が会社目線で社員を見ているなら、社員も会社目線で自分の仕事を見るようになります。
組織を変える第一歩は、「もっと伝える」――です。
執筆:埼玉県熊谷市の社会保険労務士・竹内由美子(中小企業の人と職場の課題をサポート)
「もしかしてうちの職場も当てはまるかも」と感じたら、早めにご相談ください。状況を整理し、必要に応じて改善策や対応方法をご提案いたします。




