面接は「お見合い」
午前10時。
佐藤さん(20代後半)は、期待を胸に会社のドアを叩きました。
求人票を何度も読み込み、社長の理念に共感し、この日を迎えました。
彼女にとって、この面接は人生を共にするかもしれない「相手」との大切な「お見合い」でした。
一方、田中社長(50代)は、山積みの書類を前に溜息をついていました。
「また一人辞めた。早く誰か入れないと……」
彼にとって、今日の面接は欠員を埋めるための「作業」でした。
噛み合わない面接
「志望動機は?」
田中社長は履歴書に目を落としながら、片手でスマホをチェックしています。
佐藤さんが想いを語り始めても、視線はスマホへ。
(私の話、聞いてないのかな……)
佐藤さんの熱意は、少しずつ冷めていきました。
「給与は、具体的にどのくらいになるのでしょうか?」
田中社長は、少し面倒くさそうに答えました。
「それは採用が決まった後で。まずは、やる気があるかどうかが大事だから」
(後で? 時給も分からないのに……何か隠してるのかな)
佐藤さんの不信感は、確信へと変わりました。
面接の終盤、田中社長は言いました。
「佐藤さん、いいね。気に入った。明日から来られる?」
それは、獲物を捕らえたような、焦りに満ちた言葉でした。
(明日? 給与も休日も聞いてないのに……この焦り方が、逆に怖い)
佐藤さんの期待は、恐怖へと変わりました。
「少し、考えさせてください」
佐藤さんは、そう答えるのが精一杯でした。
会社を後にした足取りは、重く沈んでいました。
採用通知は届くかもしれません。でも、この時点で、彼女の心はもう離れていました。
(給与も教えない、スマホばかり見てる社長。
きっと、入社しても大事にされない……ブラック企業かもしれない)
面接は、信頼の第一歩
「最近、すぐ辞める人が多い」と悩んでいるなら、原因は採用後の教育ではなく、この「入り口」での第一印象かもしれません。
面接は、会社が応募者を選ぶ場であると同時に、応募者が会社を見極める場でもあります。
最初の印象で、「ここで働きたい」と思うか、「ここはやめておこう」と思うか、
その分かれ道は、特別なテクニックではありません。
- ごまかさないこと
- 急がせないこと
- そして、相手を一人の人として扱うこと
丁寧すぎるくらいの対応で、ちょうどいい。
まとめ
面接で失った信頼は、入社後に取り戻すことはできません。
面接は、単なる選考の場ではなく、これから一緒に働く仲間との、最初の出会いです。
会社側が、求職者の立場に立った対応をすれば、採用後の定着率も高まります。
もし「最近、すぐ辞める人が多い」と感じているなら、
社歴の浅い社員に面接時の印象を聞いてみるといいでしょう。
新しい発見があるかもしれません。
信頼される面接チェックリスト
忙しいときこそ、この5項目を自分に問いかけてみてください。
- □ 履歴書よりも、相手の「目」を見て話しているか?
- □ 相手が一番知りたい「お金と休み」の話を、自分から切り出しているか?
- □ スマホやPCを遠ざけ、「あなたに集中しています」という姿勢を見せているか?
- □ 専門用語を使わず、相手の立場に立った言葉で説明しているか?
- □ 最後に「質問はありますか?」と、相手の不安に耳を傾けているか?
この5つにチェックが入るだけで、求職者の安心感は劇的に変わります。
ぜひ、面接室に入る前にこのリストを思い出してください。
執筆:埼玉県熊谷市の社会保険労務士・竹内由美子(中小企業の人と職場の課題をサポート)
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