Q. そろそろ従業員を雇いたいのですが、何から考えるべきでしょうか?

【A】「雇えるか」ではなく、「雇い続けられるか」を先に考えることです

「仕事が増えてきたから、そろそろ人を雇おうかな」
多くの経営者が一度は考えます。

ここで一番大切なのは、今、雇えるかどうかではなく、半年後・1年後も雇い続けられるかどうかです。

人を雇うというのは、「人手を増やす」ことではなく、固定費と責任を引き受ける決断だからです。

【現実】人を一人雇うと、何が増えるのか

たとえば、法人でフルタイムの従業員を1人雇うと、最低限、次のことが必要になります。

【採用時】

  1. 雇用契約書の作成・締結
  2. 労働保険(労災・雇用)、社会保険の新規適用・加入
  3. 健康診断(採用時)

【日常業務】

  1. 勤怠管理(タイムカード等)
  2. 給与・賞与計算
  3. 年次有給休暇の管理

【定期手続き】

  1. 所得税・住民税の手続き、納付
  2. 健康診断(年1回)
  3. 年末調整

【必要に応じて】

  1. 36協定届(時間外・休日労働をさせる可能性がある場合)

思ったより、やることが多いですね…。
ここで一度、立ち止まる方も、少なくありません。

【よくある誤算】本当に大変なのは、手続きの後

手続き以上に大変なのが、雇った後です。

  • 仕事をどう教えるか
  • どこまで任せるか
  • できているか、どう評価するか
  • 注意や指導をどうするか

実際に業務を任せ始めると、「人を育てる」という別の負荷が一気に増えます。
ここを想定せずに採用すると、社長自身が一番苦しくなります。

【社労士が見てきた現場】雇ったことで行き詰まった例

これまで、勢いで採用した結果、数か月〜数年で廃業したケースも見てきました。

  • 自分のやり方にこだわりすぎて業績が伸びず、給与や社会保険料が払えなくなり、早期に廃業
  • 仕事はあるが、指導やコミュニケーションができず、結局一人に戻ったケース
  • 売上は伸びたが、人件費と社会保険料の負担が想定以上に重く、 手元資金が枯渇して廃業に追い込まれたケース

人を雇うことで、経営の難易度が一段階上がります

【対応】雇用と同時に考える「人材育成」

人を雇う場合、採用と同時に、次の準備も必要になります。

【雇用前に準備すること】

  • マニュアル・手順書・チェックリストを作る
  • 情報を共有する仕組みをつくる

【雇用後、継続的に行うこと】

  • 定期的に評価・フィードバックをする
  • ルールを決め、守らせる

【そして何より】

  • 社長自身が手本になる

人数が少ないうちに仕組み化しておくと、後がラクです。

【まとめ】勢いで雇わないためのチェックポイント

人を雇うこと自体は、素晴らしいことです。
ただし、

  • 固定費として払い続けられるか
    → 最低でも半年〜1年分の人件費(給与+社会保険料)は確保できているか

  • 教える時間と余裕があるか
    → 最初の3ヶ月、1日1〜2時間、隣で教える時間が取れるか
     (業種・業務内容により異なる)

  • 仕組み化する覚悟があるか
    → マニュアル作成や評価制度の導入に着手できるか

この3つを一度、冷静に考えてみることをお勧めします。

最初から完璧である必要はありません。
できるところから、優先順位を決めて進めれば大丈夫です。

「雇うこと」より、「雇い続けること」。
ここを意識するだけで、失敗の確率は大きく下がります。


執筆:埼玉県熊谷市の社会保険労務士・竹内由美子(中小企業の人と職場の課題をサポート)

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