「佐藤さんはもうできてるのに、なんで君は……」
新人の田中(23歳)は、課長の山田から報告書のやり直しを指示されました。
「田中、この報告書、まだまだだな」
「すみません……どこが悪いですか?」
「佐藤さんはもうできてるのに、なんで君はこんなに時間かかるんだ。同期だろ?」
田中は、黙りました。(佐藤さんと比べられても……)
比べられるたびに、やる気が消えていった
それ以来、田中は報告書を書くのが怖くなりました。
(また佐藤さんと比べられる)
(どうせ自分はダメなんだ)
田中は、言われたことだけをやるようになりました。
自分から提案することもなくなりました。
山田は、気づいていました。
(田中、最近元気ないな。やる気がないのか?)
社労士からのアドバイス
ある日、山田は社労士に相談しました。
「最近の若い子は、ちょっと注意するとすぐ落ち込むんです。どう接すればいいんでしょう」
「どんな注意をしていますか?」
「『〇〇さんはできてるのに』とか、『同期はもっと早い』とか……」
社労士は、静かに言いました。「それ、やめた方がいいです」
「え? でも、分かりやすく伝えたいから……」
「他人と比べられると、人は『否定された』『劣っている』と感じます。
すると、やる気が削がれるんです」
山田は、はっとしました。
比べる相手を「本人の過去」に変えた
社労士は続けました。
「部下を伸ばしたいなら、比較の相手は『他人』ではなく、その部下自身の過去です」
「どういうことですか?」
「たとえば、『前よりミスが減ってきたね』『最初より、段取りがよくなっている』という声かけです」
「……確かに、そっちの方が前向きですね」
「人は、自分の成長に気づいてもらえたときに、もう一段階伸びます」
山田が変えた伝え方
翌週、田中が報告書を提出しました。山田は、以前と違う言い方をしました。
「田中、この報告書、前よりずいぶん良くなったな」
田中は、驚いた顔をしました。「え……本当ですか?」
「ああ。最初の頃は、データの整理がバラバラだったけど、今は見やすくなってる」
田中は、少し嬉しそうにしました。
「次は、この部分をもう少し簡潔にしてみるといいかもしれない。どう思う?」
「……やってみます」
【伝え方のコツ】評価 → 提案 → 確認
社労士が教えてくれた伝え方は、こうでした。
- まず、できている点を伝える
「ここは、前より確実に良くなっている」 - 次に、提案として伝える
「次は、こうしてみるのもありそうだね」 - 最後に、部下の考えを聞く
「どう思う?」
ダメ出しではなく、一緒に考えている姿勢を見せることがポイントです。
3ヶ月後、田中が変わった
3ヶ月後、田中は自分から提案するようになりました。
「課長、この報告書、こういう構成にしてみたんですけど、どうでしょうか」
山田は、嬉しくなりました。(田中、成長したな)
【まとめ】人は、比べられて育つのではない
人は、他人と比べられて成長するのではなく、昨日の自分より前に進んでいると実感できたときに育ちます。
- 他人と比べない
- 本人の過去と比べる
- 成長を言葉にして伝える
この積み重ねが、自分で考え、前に進める部下を育てていきます。
執筆:埼玉県熊谷市の社会保険労務士・竹内由美子(中小企業の人と職場の課題をサポート)
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そんなときは、お気軽にご相談ください。
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