新入社員がすぐに辞めるシリーズ①/「期待」がプレッシャーに変わる

はじめに:「期待」が「圧力」になっていませんか?

「即戦力採用なのに、全然使えない」
「もっと頑張ってほしいのに、すぐ辞める」

そんな不満を抱えていませんか?

でも、もしかしたらその新入社員は、 あなたの「期待」という名のプレッシャーに耐えきれず、逃げ出しているのかもしれません。

実例:プレッシャーに耐えきれず3ヶ月で退職

ある建設会社(従業員15名)に入社したBさん(28歳、経験者採用)。
入社初日、社長は笑顔でこう言いました。

社長:「即戦力として期待してるから、早く覚えてね」
Bさん:「はい、頑張ります」

ところが1週間後
社長:「なんでこんなこともできないの?経験者だろ?」
Bさん:「…すみません」

さらに1ヶ月後には、上司からもこんな言葉が。
上司:「Cさん(前任者)はもっと早かったんだけどな」
Bさん:(自分には向いてないのかも…)

そして3ヶ月後、Bさんは退職しました。
退職面談では、こんな言葉を残しています。

「『即戦力』と言われて、プレッシャーがすごかった。 前の会社とやり方が違うのに説明もなく、 できないと『なんで?』と責められて…もう無理でした」

新入社員を追い詰める「無意識の言葉」

経営者や上司が何気なく言う言葉が、新入社員には大きな重圧になります。

よくある発言新人の受け止め方
「なんでできないんだ?経験者だろ?」「自分は向いてないのかも…」
「前任者はもっと早かった」「どうせ自分は劣ってる」
「早く覚えてくれよ」「ミスしたら怒られる…」
「こんなことも分からないの?」「もう質問できない」

これらの言葉は、新入社員に「自分にはこの仕事は無理だ」と思わせてしまいます。

なぜ経営者は気づかないのか?

多くの経営者は、自分が「厳しい環境」で育ってきたため、それが当たり前だと思っています。

  • 「自分も怒られて強くなった」
  • 「厳しさがないと成長しない」
  • 「甘やかすとダメになる」

しかし、今の若手は違います。彼らは情報が多く、比較も早い。
「この会社じゃなくてもいい」と思えば、環境を変えるのです。

「耐えられる人だけ残ればいい」では、もう人は残らない時代です。

期待値を調整する3つの方法

方法1:「即戦力」の定義を明確にする

× 「即戦力だから、すぐできるはず」
◯ 「最初の1ヶ月は慣れる期間。6ヶ月で一人前を目指そう」

基準を明文化することで、上司も新人も焦らなくなります。

方法2:比較ではなく、成長を褒める

× 「○○さんはもっと早かった」
◯ 「先週よりできるようになったね」

他人との比較ではなく、本人の成長を評価することが定着の鍵です。

方法3:「焦らなくていい」と明確に伝える

× 「早く覚えて」
◯ 「焦らなくていいよ。最初は誰でも時間がかかるから」

この一言が、プレッシャーを和らげます。

実例:期待値を調整したら定着した

先ほどの建設会社で、社長が3つの方法を実践した結果、

  • 新入社員2名が6ヶ月以上定着
  • 「この会社で成長したい」と前向き発言が増加
  • 退職者ゼロに

社長の言葉:「期待値を下げたら、逆にやる気が出たみたいだ。無理なプレッシャーをかけてたんだな」

まとめ:「厳しさ」よりも「適切な期待」が人を育てる

新入社員がすぐ辞めるのは、「根性がない」のではなく、「プレッシャーに耐えきれない」からかもしれません。

プレッシャーをかければ

  • 萎縮して、質問できなくなる
  • 自信を失い、辞める

期待値を調整すれば

  • 安心して成長できる
  • 定着率が上がる

今日からできること

  1. 「即戦力」という言葉を使わない
  2. 週1回、「困ってない?」と聞く
  3. 比較ではなく、成長を褒める

完璧を目指す必要はありません。
まずは 「焦らなくていいよ」 と一言添えるところから始めてみませんか?

次回は「フォロー体制の欠如」について解説します。


執筆:埼玉県熊谷市の社会保険労務士・竹内由美子(中小企業の人と職場の課題をサポート)

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