はじめに:社労士に直接相談が来る本当の意味
「上司には言えないので、社労士さんにだけ相談させてください」
顧問社労士をしていると、こういうことがたまにあります。
そして、私はその声を聴くと、少し緊張します。
なぜならそれは、「社内に、安心して話せる場所がない」というサインだからです。
※誤解のないようにお伝えします。
社労士に相談できること自体が悪いわけではありません。
問題なのは、「社内では言えない」状態が常態化していることです。
本来、社員の悩みや違和感は、まず社内で吸い上げられるのが健全な姿だからです。
【診断】あなたの会社は大丈夫?
正直に、当てはまるものをチェックしてみてください。
- □ 社員が直接、社労士に相談する
- □ 上司は「うちの部下は何も言ってこない」と言う
- □ 匿名の相談窓口がない
- □ 管理職向けの「聴く力」研修をしていない
- □ 社員アンケートを取ったことがない
✓が3つ以上 → 声を上げにくい職場の可能性あり
✓が5つ → 危険信号。離職予備軍がいるかもしれません
なぜ社員は社労士にだけ相談するのか?
背景には、個人の問題ではなく構造的な理由があります。
1.上司の問題
- 忙しそうで話を聞いてもらえない
- 相談すると感情的に返される
- 評価や人事に影響しそうで怖い
2.経営者の問題
- 管理職の育成をしていない(聴き方を教えていない)
- 相談窓口が明確でない(「困ったら誰に言えばいい?」が不明)
- 「うちは大丈夫」と過信している(現場の声が届いていない)
3.組織の問題
- 心理的安全性の欠如
- 相談しても変わらない文化
- 声を上げた人が損をする文化
これらの状態が続くと、社員はこう考えます。
「どうせ言っても無駄」
「なら、外に相談しよう」
そして最終的には、黙って辞めるか、外部機関へ訴えるという形に進んでいきます。
心理的安全性とは?
Googleの研究でも、成功するチームの最大の要素は「心理的安全性」だと結論づけられています。
これは、
- 「失敗しても否定されない」
- 「相談しても不利益を受けない」
という安心感のことです。
この安心感がない職場では、社員は声を上げられません。
そして、溜まった不満は離職や外部機関への訴えにつながります。
経営者が今すぐできる5つのステップ
- 自分が相談しにくい存在だと自覚する
特にトップダウン色が強い経営者ほど、社員は「批判や評価が怖い」と声を上げにくくなります。 - 外部相談窓口を「正式に設置」する
・社労士 や 顧問弁護士 を「公式な相談窓口」として明文化する。
・相談者の秘密は守り、不利益は与えないことを、会社として約束する。 - 相談の流れを決める
・社員→社労士に相談(メール・電話)
・社労士が内容を整理
・「誰が言ったか」ではなく「どんな課題があるか」を経緯者に報告
・改善策を協議
・社員にフィードバック
※社労士は両者がうまくいくための調整役です。 - 上司の「聴く力」を育てる
・最後まで遮らず聴く
・反論より共感
・正解を出そうとしない
※管理職研修を年2〜4回行い、ロールプレイで体に染み込ませます。 - 社員の声を拾う「仕組み」を入れる
・匿名アンケート:「職場で困っていることは?」「改善してほしいことは?」
・意見箱の設置:匿名、月一回経営者が確認後回答
・月1回の1on1面談:上司と部下が15分個別に話す、「最近どう?」の雑談から
実際の会社での改善事例
ある会社では、匿名フォーム+月1回の回答公開を始めました。
最初は社労士経由の相談が多かったものの、次第に上司への相談が増え、社内で解決できるケースが増えていきました。
まとめ:「相談される」はまだ期待されている証拠
社員が社労士に相談するのは、
- まだこの会社で働きたい
- まだ変わる可能性がある
- まだ期待している
からです。
本当に諦めた人は、何も言わずに辞めます。
だからこそ、「相談が来た」という事実は、まだ間に合うサインです。
- 相談窓口が明確
- 上司が聴く姿勢を持つ
- 声を上げても不利益がない
この3つが揃えば、職場は確実に変わります。
最後に
社労士は、社員の味方でも、経営者の敵でもありません。
会社が長く続くための調整役です。
社内で声が出る仕組みを整えることが、離職を防ぎ、組織を守る一番の近道になります。
執筆:埼玉県熊谷市の社会保険労務士・竹内由美子(中小企業の人と職場の課題をサポート)
「もしかしてうちの職場も当てはまるかも」と感じたら、早めにご相談ください。





