「なんで私だけ、賞与が少ないんですか?」
12月のある日、佐藤は賞与明細を見て驚きました。「同期の田中より、5万円少ない!」
佐藤は、上司の山田に聞きました。
「課長、なんで私だけ賞与が少ないんですか?」
山田は、少し困った顔をしました。「……総合的に判断した結果だよ」
「総合的って、何ですか?」
「いろいろ、評価した結果……」
佐藤は、納得できませんでした。(何を評価されたのか、全然分からない)
「ちゃんと見てるのに」と思う上司、「見られてない」と感じる部下
後日、山田は社労士に愚痴をこぼしました。
「佐藤に賞与の理由を聞かれたんですけど、説明が難しくて」
「どう説明したんですか?」
「『総合的に判断した』って言いました」
社労士は、静かに言いました。「それでは、佐藤さんは納得できませんよ」
「でも、ちゃんと見て評価してるんです」
「『ちゃんと見ている』は、具体的に伝えないと伝わりません」
山田は「ちゃんと見ているつもり」でした。
でも佐藤は、「評価されている実感がない」と感じていました。
この「つもり」のズレが、静かにやる気を削っていきます。
「評価が見えない」とはどんな状態?
社労士は説明しました。
「金額は伝わっている。でも、その理由が伝わっていない。これが典型的な『評価が見えない』状態です」
佐藤の頭の中は、こうなっています。
- なぜこの賞与額なのか
- 去年と何が違ったのか
- 何を頑張れば上がるのか
結果だけ渡され、根拠がわからない。これが「見えない評価」です。
評価が見えないと、何が起きるのか
3ヶ月後。佐藤は、変わりました。
以前は積極的に提案していたのに、今は言われたことだけをやるようになりました。
同僚の田中が聞きました。
「佐藤さん、最近元気ないね」
「……頑張っても評価されないから、もういいかなって」
「どういうこと?」
「賞与が少なかった理由も教えてくれないし、何を頑張ればいいのかも分からない。
どうせ同じなら、最低限だけやればいいかなって」
評価が見えないと、こうなります。
- まず、努力をやめる
- 次に、提案をやめる
- 最後に、期待することをやめる
すると、職場ではこうなります。
- 挑戦しなくなる
- 最低限のことしか、しなくなる
- 「どうせ」が口癖になる
- 会社への不信感が強まる
最初は評価の問題だったのが、しだいに業績の問題に変わっていきます。
「評価制度がないと、ダメなんですか?」
山田は、社労士に聞きました。「評価制度がないと、ダメなんですか?」
「立派な制度はいりません。まずは、『評価のものさし』を言葉にすることです」
「ものさし?」
「実務では、この3つの軸が使いやすいです」
【評価の3つの軸】
- 結果を出したか
- 姿勢・どう取り組んだか(プロセス)
- チームへの貢献度(周囲にどう影響したか)
「このように、会社が何を大事にしているかを、先に示します。それだけで行動は変わり始めます。制度は後から整えればいいのです」
山田が変えたこと
それから、山田は賞与額の理由を、面談で伝えるようになりました。
「佐藤、今回の賞与は前回より上がってるよ」
「え、本当ですか?」
「10月の顧客対応が良かった。クレームを丁寧に処理してくれて、お客様から感謝の連絡があったんだ」
佐藤は、嬉しそうに言いました。
「ありがとうございます」
「次は、チームへの協力をもう少し意識してくれると、もっと評価が上がるよ。どう思う?」
「……やってみます」
面談は年1回で足りる?
社労士は続けました。「面談の理想は半年に1回、できれば四半期に1回が望ましいです」
「でも、忙しくて……」
「『あなたを見ています』というメッセージが届けば、10分でも効果はありますよ」
評価を伝えるときの3つのコツ
社労士は、3つのコツを教えました。
- 感覚ではなく事実で話す
×「頑張ったね」 〇「10月の顧客対応が良かった」 - 「良い点→ 改善点」の順で伝える。
逆だと、防御反応が出ます - 「どう思う?」と必ず聞く
評価は、『対話』で伝わります。
3ヶ月後、佐藤が変わった
3ヶ月後。佐藤は、また積極的に提案するようになりました。
「課長、この件、こういう改善案があるんですけど」
山田は、嬉しくなりました。(やっと、戻ってきた)
まとめ
社員のやる気は、給料だけでは動きません。
納得できる評価で動きます。
必要なのは、
- 何を評価しているかを言葉にする
- 定期的に対話をする
- 理由を具体的に伝える
評価制度は、紙より『対話』です。
もし少しでも不安があれば、早めに見直す価値があります。
執筆:埼玉県熊谷市の社会保険労務士・竹内由美子(中小企業の人と職場の課題をサポート)
「評価をどう伝えればいいかわからない」「社員が評価に納得していない」
そんなときは、お気軽にご相談ください。
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