仕事を抱え込む人が組織にもたらすリスク
どんなに優秀な人でも、1人で仕事を抱え込み続けると、組織全体のパフォーマンスが下がります。
たとえば、こんな状況に心当たりはありませんか?
- その人が休むと、業務が完全に止まる
- 引き継ぎがうまくいかず、取引先に迷惑をかける
- 他の社員が何をやっているのか分からない
- ミスがあってもチェック体制がなく、改善されない
「属人化」は一見するとその人の責任感の強さのように見えますが、
組織にとっては大きなリスクです。
なぜ「仕事を教えない人」が生まれるのか
仕事を抱え込む背景には、さまざまな心理や思い込みがあります。
たとえば、
- 「自分にしかこの仕事はできない」というプライド
- 「人に仕事を教えると、自分の居場所がなくなる」という不安
- 人に頼るのに抵抗があり、結果的に抱え込む
- 過去に教えた相手が失敗した経験から「教えるより自分でやる方が早い」と感じている
こうした気持ちは理解できますが、放置していると周囲の成長も止まり、業務の効率がどんどん落ちていきます。
属人化が引き起こす具体的な問題
「仕事を教えない人」がいると、次のような問題が現れます。
- 仕事の効率が落ちる
他人の視点が入らないことで、自分のやり方が絶対だと思い込み、
改善や効率化の余地に気づきにくくなる - 残業が当たり前になる
非効率なやり方にこだわり、一人で抱え込むため、残業が慢性化します。
それを指摘すると、「この仕事は時間がかかるのが当たり前」と正当化します。 - 人が育たない
「自分さえわかっていればいい」ので、マニュアルや手順書を作らず、教えもしないので、他の社員が育たず「できる人にばかり仕事が集中する悪循環」が起こります。
結果的に、組織全体の士気や離職率に直結します。
成功事例:属人化解消で残業30%削減
実際にこんな事例がありました。
ある中小企業では、ベテラン社員が受注業務を全て一人で担当していました。
この社員が休むと業務が止まってしまい、他の人も何がどうなっているか分からない。
上司は大きな危機感を持ち、次の3つの対策を実行しました。
- 新人とペアを組ませる
→ まず一緒に業務を進めるところから始めました。 - 手順書・マニュアルを作成
→ 毎週少しずつ文書化を進め、誰でも一定水準の業務ができるように整備。 - 教え合いミーティングを週1回開催
→ 進捗と疑問を共有し、改善を繰り返しました。
最初はベテラン社員も抵抗感がありましたが、
「説明するうちに自分の理解が深まった」
「手順書を作ったことで、業務の無駄が見えた」
と手応えを感じるようになりました。
半年後、繁忙期でも残業が30%削減され、周囲からの感謝も増えました。
上司・経営者がとるべき具体的対応
仕事を教えない人には、以下のようなステップで働きかけると効果的です。
- 具体的な指示をします
「Aさんとこの業務を一緒にやってください」
「その過程で、マニュアルやチェックリストを作成してください」
といったように、やるべきことを明確に指示します。 - 次のことを注意深く観察し、振返りをします
たとえば、
・Aさんに対して、高圧的・冷淡・ミスを責める等の
言動をしていないか
・Aさんが困っているときにサポートしているか
・フィードバックを通じてAさんの成長を促しているか 等 - 改善が見られない場合は、配置転換や退職も含めた対応に進みます。
- 【最重要】「人を育てた人を評価する」という方針を示します
この方針を評価基準に落とし込み、教え合う文化を定着させていきます。
自分の成長につながる「仕組み化」のすすめ
「自分だけができる仕事」にとどまるより、「誰でもできる仕組みを作る人」になることが、
あなた自身のキャリアにとっても大きな成長になります。
部下や後輩が成長すれば、あなたにも時間的な余裕ができます。
その余裕はやがて、
- より高度な仕事へのチャレンジ
- 部下の育成
- マネジメント力や経営者視点の向上
といった「自分の成長」につなげることができます。
「自分だけができる仕事」から「誰でもできる仕組み作り」に変えていくことで、
あなたは周りから信頼され、必要とされる人材になるはずです。
まとめ
仕事の属人化は、組織を弱らせる大きな要因です。
「教える時間がない」「面倒だから自分でやる」という気持ちは分かりますが、
今こそ変えるタイミングです。
一歩ずつでも「共有」「標準化」を進めていきましょう。
きっとあなたの職場も、もっと強く、働きやすい場所になるはずです。
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