「最近どう?」が言えなくなった職場
山田社長が気になり始めたのは、朝礼のときだった。
社員たちが、目を合わせない。
必要なことだけ話して、すぐ席に戻る。
笑い声が、いつの間にか消えていた。
ある日、木村課長が山田社長に報告しました。
「佐藤と田中が、口をきかなくなっています。仕事には支障ないんですが」
「何があったんだ?」
「些細なことだったと思うんですが、こじれてしまって」
山田社長は、どうすればいいかわからなかった。
会議で「もっとコミュニケーションを取れ」と言ったこともある。でも、何も変わらなかった。
社労士に相談すると、こう聞かれた。
「社長、最後に社員と『仕事以外の話』をしたのはいつですか?」
山田社長は、答えられなかった。
「対話」と「業務連絡」は、まったく別物
「進捗どう?」「明日までによろしく」は業務連絡で、対話とは異なります。
対話は、「最近忙しそうだけど、何か困ってることある?」と、相手の気持ちに寄り添うことです。
ギスギスした職場の多くは、業務連絡しかしていません。
なぜ対話が職場を変えるのか
人は、自分の話を聞いてもらうと、相手に心を開きます。
相手の話を遮らず、否定せず、ただ聞く。それだけで、人は「この人には話せる」と感じます。
対話は、特別なスキルではありません。
日常の小さな積み重ねが、職場の空気を変えていきます。
対話を始める3ステップ
- ステップ1:雑談から始める
週末の話、子どもの話、最近気になっていること、何でもOK。
小さな雑談が、信頼の入口になります。 - ステップ2:「感情」を含む質問をする
「先週のプロジェクト、実は私も不安だったんだけど、あなたはどう感じてた?」
自分の気持ちを先に見せると、相手も話しやすくなります。 - ステップ3:月1回、15分の時間を確保する
「特別なイベント」ではなく、日常の習慣にします。
スマホを見ない、メモも取らない。その15分だけは、目の前の人だけを見ます。
「話したくない」という社員への対応法
対話を始めようとしても、警戒する社員もいます。
そんなときは無理強いせず、「そっか、またいつでも話してね」と引きます。
押しつけは逆効果になります。
選択肢を与えることも有効です。
「今話せる?それとも来週がいい?」と相手に選ばせると、「自分でコントロールできている」という感覚が生まれ、少し心が開きやすくなります。
3ヶ月後の山田社長
社労士のアドバイスを受けた翌週から、
山田社長は、朝、出社してきた社員に、「最近どう?」と声をかけるようになりました。
最初はぎこちなかったものの、続けていくうちに、少しずつ返ってくる言葉が増えていきました。
木村課長も、佐藤と田中の間に入って話を聞きました。
ぎこちなかった二人の関係が、少しずつほぐれていきました。
まとめ
職場の空気が変わるのに、特別なスキルはいりません。
誰か一人に、「最近どう?」と声をかけるだけでいいのです。
その一言が、止まっていた空気を動かします。
執筆:埼玉県熊谷市の社会保険労務士・竹内由美子(中小企業の人と職場の課題をサポート)
「職場の空気が重くなっている」と感じたら、お気軽にご相談ください。




