「課長、最近避けられていませんか?」
ある日、総務の鈴木が、課長の山田に声をかけました。
「課長、部下に避けられていませんか?」
「え? そんなことないだろう」
とはいったものの、山田には心当たりがありました。
最近、部下の佐藤が相談に来なくなったのです。
以前は頻繁に相談に来ていたのに、今は必要最低限の報告しかしません。
山田は、佐藤との最近のやり取りを思い出しました。
1週間前。
佐藤が報告に来ました。
「課長、この件なんですけど……」
「あ、それね。結論から言って」山田は、佐藤の話を遮りました。
佐藤は、少し戸惑った顔をしましたが、続けました。
「結論としては、A案で進めたいんですが……」
「A案? それじゃダメだろう。何でB案にしないんだ」
「いや、B案だと……」
「いいから、B案でやれ」
佐藤は、何も言えませんでした。
3日前。
佐藤がミスをしました。
「佐藤、何やってんだ! 何度言えばわかるんだ!」
山田は、他の社員の前で大声で叱りました。
佐藤は、黙って下を向いていました。
昨日。
山田は、別の部下の田中とばかり話していました。
佐藤は、それを見ていました。
(やっぱり、田中さんばかり可愛がってる)
嫌われる上司の行動パターン
山田は、社労士に相談しました。
「最近、部下が避けてるんです。なんでですかね」
社労士は、山田の話を聞いて、こう言いました。
「山田さん、こんな行動に心当たりはありませんか?」
- 部下の話を遮り、最後まで聴かない
- 感情的に叱る、ダメ出しばかりする
- 自分の価値観を一方的に押し付ける
- 「注意すれば直る」と思い込み、結果を振り返らない
- 特定の部下にだけ話しかけ、えこひいきを疑われる
- 過剰な期待を押し付け、できないと責める
山田は、はっとしました。「……全部、当てはまります」
「これらが積み重なると、部下は『どうせ分かってもらえない』と心を閉ざします。
最悪の場合は、退職やトラブルにつながります」
信頼される上司の行動習慣
社労士は、6つの行動習慣を教えました。
- 最後まで聴く:
途中で遮らず、共感の言葉を添えると安心感が生まれます。
悪い例:「結論から言って」「それでどうなったの?」
良い例:「うんうん、それで?」「そうか、大変だったね」 - 提案型で伝える:
「こうしろ」ではなく、「こういう方法もあるけど、どう思う?」と選択肢を示します。
悪い例:「いいから、B案でやれ」
良い例:「A案もいいけど、B案も検討してみない? どっちがいいと思う?」 - 結果を一緒に振り返る:
原因と改善を共に考え、自覚と成長を促します。
悪い例:「何やってんだ! 何度言えばわかるんだ!」
良い例:「なぜこうなったと思う? 次はどうすればいいかな?」 - 公平に声をかける:
偏りなく接することで不公平感を防ぎます。
悪い例:特定の部下とばかり話す
良い例:全員に均等に声をかける - 小さな成長を褒める:
期待を下げて成果を認め、信頼を深めます。
悪い例:「これくらいできて当然だろう」
良い例:「前よりミスが減ったね。成長してる」 - 育成を意識する:
人と比べて叱るのではなく、一緒に改善し再挑戦させます。
悪い例:「田中はできてるのに、なんで君はできないんだ」
良い例:「次はこうしてみよう。一緒に考えよう」
山田課長が変わった
それから、山田は行動を変えました。
佐藤が報告に来たとき、
「課長、この件なんですけど……」
「うん、聞かせて。最後まで話してくれる?」
佐藤は、少し驚いた顔をしました。
「……A案で進めたいんですが」
「A案か。B案も検討してみた? どっちがいいと思う?」
「B案だと、コストがかかりすぎるので……」
「なるほど。じゃあ、A案で進めよう。何かサポートできることある?」
佐藤は、嬉しそうに答えました。「大丈夫です。ありがとうございます」
3ヶ月後。
佐藤は、また頻繁に相談に来るようになりました。
「課長、この件、相談したいんですけど」
「いいよ、話して」
山田は、嬉しくなりました。(やっと、信頼を取り戻せたかな)
まとめ:信頼関係が成果を生む
部下に嫌われるか、信頼されるかは、日々の小さな対応の積み重ねで決まります。
- 聴き切る
- 提案型で伝える
- 結果を一緒に振り返る
- 公平に声をかける
- 期待値を下げて褒める
- ダメ出しせず育成に時間をかける
これらを意識するだけで、信頼関係はぐっと深まり、相談が増え、チームは活性化します。
「嫌われる上司」から「信頼される上司」へ。その一歩は、あなた自身の姿勢から始まります。
執筆:埼玉県熊谷市の社会保険労務士・竹内由美子(中小企業の人と職場の課題をサポート)
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