はじめに:口頭注意だけでは会社は守れない
「そんなこと言われていない!」「証拠を出せ!」
社員への注意が、後に裁判や労基署調査に発展すれば、最悪の場合、数百万円単位の残業代請求や慰謝料 を支払う羽目になることもあります。
「口頭だけの注意」は、実は 最も危険な対応 です。
トラブルから会社を守るカギは、注意を “書面で残すこと” にあります。
1.口頭注意だけが招く「3つの最悪シナリオ」
- 裁判で敗訴
「注意した証拠がない」と判断され、会社側が不利になる。 - 労基署からの指摘
「記録がない=管理放棄」と見なされ、是正命令・長期調査・社名公表のリスクに直結。 - 職場崩壊
問題社員が開き直り、周囲の社員が不満を募らせ離職につながる。
2.正しい注意指導のステップ
感情的に叱るのではなく、段階を踏んだプロセスが重要です。
- 第1段階:口頭で注意(ただし社内記録を書面で残す)
- 第2段階:改善がなければ書面で注意指導
- 第3段階:それでも改善しなければ警告書(懲戒処分の可能性を明示)
この流れを守ることで、公正で一貫性のある対応 となり、証拠力も高まります。
3. 書面が持つ「教育」と「防衛」の力
書面指導には2つの大きな効果があります。
- 教育効果
社員本人が「正式に注意された」と自覚し、行動を改めやすくなる。 - 防衛効果
トラブルが裁判や労基署調査に発展した際、会社を守る強力な証拠となる。
「教育」と「防衛」の両輪が揃うのは、書面化だけです。
【参考】書面指導の実践ポイント
書面に残す際は、次の点を必ず盛り込みましょう。
- 問題行動の事実(何をしたのか)
- その行動の背景や経緯
- 業務や顧客・同僚への悪影響
- 本人の反応(反省したか、反発したか)
さらに、改善状況をチェックリスト化し、定期的に確認すると効果が高まります。
4. 抵抗・再発する社員への対応
それでも反発や再発を繰り返す社員には、次の対処を。
- 「自分はちゃんとやっている」と反論されたら
→ 書面記録でこれまでのミスや迷惑行為、会社に生じた損害や影響を淡々と示す - わざとトラブルを起こされたら
→ 証拠を積み上げ、懲戒や解雇に備える - 本人に適性がない場合
→ 昇給・評価は見込めないと説明し、淡々と退職を促す
5.紛争リスクに備える「証拠」としての書面
万が一、紛争になったときは、書面の記録が最大の武器になります。
- 「この社員には改善の余地がなかった」
- 「労使間の信頼関係はすでに破綻していた」
これらを客観的に示せれば、会社側に有利な判断が下される可能性が高まります。
まとめ:書面で残すことが会社を救う
- 口頭注意だけでは 裁判・労基署・高額賠償 のリスクが残る
- 書面化は「教育」と「防衛」の両方で効果を発揮する
- 今日からできることは、注意指導のチェックシートや簡易フォーマットを用意して、必ず記録に残す習慣 をつくること
“書面で残す”たったそれだけで、社員を育て、会社を守る。経営者にとっての最強のリスク回避策です。
執筆:埼玉県熊谷市の社会保険労務士 竹内由美子(中小企業の人と職場の課題をサポート)
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