「何のために」を共有すれば、無駄な残業は減る

はじめに

「部下が真面目すぎて、簡単な資料にも何時間もかけてしまう」
「完璧を求めすぎて、残業が減らない」
──経営者や管理職から、よく聞く悩みです。

これは部下の性格の問題ではありません。
多くの場合、「何のためにこの仕事をするのか」が共有されていないことが原因です。

真面目な人ほど陥る“完璧主義の罠”

すべての仕事には目的があります。
そして、目的によって求められる完成度も、かける時間も変わります。

たとえば「資料作成」。

  • 社内の朝礼用なら、要点が伝われば30分で十分
  • 取引先への提案資料なら、信頼を左右するため数時間かけて丁寧に
  • 給与計算なら、正確性が命。ミスゼロが絶対条件

しかし目的が共有されない職場では、真面目な社員ほど「すべての仕事を完璧に」と頑張りすぎ、

  • 上司は「そこまでやらなくていいのに」と感じ、
  • 本人は「頑張っても評価されない」と落ち込みます。

結果、誰も得をしない努力のすれ違いが起こります。

上司がすべきは「目的の見える化」

効率的に働けるかどうかは、上司の伝え方次第です。

  1. 目的をセットで伝える
    NG:「この資料、作っておいて」
    OK:「明日の朝礼で使う。目的は新プロジェクトの概要共有。A4で1枚、箇条書きで要点が  わかればOK。30分で仕上げて」
  2. 制限時間を設ける
    「この確認は15分以内で」など、時間を枠で示すと、完璧主義な人ほど作業を区切りやすくなります。
  3. 時間を記録する
    業務ごとの所要時間をざっくりメモするだけでも、「どの作業にどれだけ時間を使っているか」が見えます。当事務所でも「〇〇業務:30分」と簡単に記録しています。
  4. 定期的に振り返る
    月に一度、チームで「時間の使い方」を見直すだけで、「ここは短縮できる」「ここはもっと丁寧に」などの気づきが生まれます。

まとめ:時間を成長のために使う

残業を減らす目的は、単なるコスト削減ではありません。
浮いた時間を、

  • 新しいスキル習得
  • 改善活動
  • チームの対話
    に使うためです。

「何のために」を共有することは、社員の時間を尊重することになります。
そしてそれは、上司・経営者の大切な役割です。

もし今、「うちのチーム、真面目すぎて遅いな」と感じたら、まずは“目的の共有”から始めてみるといいかもしれません。


執筆:埼玉県熊谷市の社会保険労務士・竹内由美子(中小企業の人と職場の課題をサポート)

「もしかしてうちの職場も当てはまるかも」と感じたら、早めにご相談ください。状況を整理し、必要に応じて改善策や対応方法をご提案いたします。