「改善提案、全部読むから出してくれ」
ある日の全体会議。課長の山田は、部下たちにこう宣言しました。
「うちの職場、もっと良くしていきたい。だから、改善提案を出してくれ。全部読むから」
部下の佐藤は、嬉しくなりました。(やっと、現場の声を聞いてくれる)
佐藤は、その日の夜、3時間かけて改善提案書を作成しました。
業務フローの無駄、コミュニケーションの課題、具体的な解決策。
すべてを詰め込んで、翌日、山田に提出しました。
しかし、3週間経っても、何の返事もありません。
佐藤は、山田に聞きました。「課長、先日の改善提案、読んでいただけましたか?」
「ああ、あれね。忙しくてまだ見てないんだ。また今度ね」
佐藤は、言葉を失いました。(結局、読む気なんてなかったんだ)
それ以来、佐藤は変わりました。
以前は積極的に提案していたのに、今は言われたことだけをやるようになりました。
同僚の田中が聞きました。「佐藤さん、最近元気ないね」
「……課長の言葉、信じられなくなったんだ」
「どういうこと?」
「『全部読む』って言ってたのに、3週間も放置された。どうせまた口だけだろうなって」
田中は、黙って頷きました。
有言不実行の上司が与える影響
有言不実行の上司の下では、このような影響が起こります。
- 部下が「どうせまた口だけだ」と思い始める
- 信頼できなくなるので、コミュニケーションや報連相が減る
- やる気がなくなるので、最低限の質で最低限の仕事をするようになる
ある部下は「上司のようにはなりたくない」と静かに離れていき、
またある部下は「どうせ頑張ってもムダだ」とモチベーションを失います。
トラブルが起きる職場の典型事例
【事例1】「昇給を考える」と言ったのに…
上司が「今年は頑張っているから昇給を考えるよ」と部下に言っていたのに、半年後の面談では「会社の状況が厳しいからまた今度」と何もなし。部下は「結局、口だけだったんだ」と落胆し、モチベーションが下がりました。
【事例2】「会議は時間厳守」→主催者が毎回遅刻
上司が「ダラダラ会議をやめよう」と宣言するも、毎回10分遅れて登場。
メンバーは「どうせ遅れる」と集合時間を守らなくなり、会議の質も低下。
「できない約束はしない」を徹底した上司
ある製造業の課長は、以前は「検討するよ」「考えておくよ」と言うことが多く、部下からの信頼を失っていました。
ある日、社労士からこう言われました。
「できない約束はしない。約束したら必ず実行する。これを徹底してください」
それから、課長は変わりました。
- すぐにできないことは、正直に言う
「今の段階では難しい。でも、3ヶ月後に再検討する」 - 小さな約束も必ず守る
「明日、資料を渡す」→ 翌日必ず渡す - 改善提案には、必ず返事をする
「提案ありがとう。この部分は今月中に実施する。この部分は予算の関係で難しいけど、代替案を考えてみる」
3ヶ月後、変化が起きました。
改善提案は増え、職場の雰囲気も良くなっていました。
部下たちは、課長の言葉が信じられるようになったためです。
「課長が『やる』って言ったら、本当にやってくれる」と。
まとめ:信頼は「言ったことをやる」積み重ねで築かれる
できない約束はしない。約束したら実行する!
約束は小さなことでも守る。それが信頼の第一歩です。
逆に、守れない約束は最初からしない。これが部下との良い関係を築く基本です。
文字で見ると当たり前のように感じますが、なかなか難しいことです。
だからこそ、有言実行する人は尊敬に値するし、人望や信頼も厚くなるのです。
部下の成長を願うなら、まず上司自身の姿勢から変えましょう。
それが、組織を守る一番の近道です。
おわりに
組織の信頼は、「言ったことをやる」ことの積み重ねで築かれます。
逆に、管理職が約束を守らない状態が続くと、社員のやる気が削がれ、定着率や生産性にも影響が出てきます。
「社員の声が届かない」「管理職の言動に不満があるようだ」、
そう感じたら、マネジメント体制の見直しを検討する時期かもしれません。
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執筆:埼玉県熊谷市の社会保険労務士・竹内由美子(中小企業の人と職場の課題をサポート)
「管理職の言動に部下が不信感を持っている」「約束が守られず、職場の雰囲気が悪い」
そんなときは、お気軽にご相談ください。
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