なんでも自分で抱え込む上司が組織を止める

はじめに

あなたの職場にこんな上司はいませんか?
「え、それも上司がやってるの?」というほど、何でも自分で抱え込んでしまう人。

一見頼りになるように見えて、実はこのタイプの上司がチーム全体を止めてしまう原因になります。

1.抱え込み上司が生む悪循環

上司が一人で仕事を抱えると、こんなことが起きます。

  1. 上司がいつも残業、疲れ切ってしまう
  2. 部下が新しい仕事に挑戦できず、成長しない
  3. 上司自身も「教える力」が身につかない
  4. チーム全体が止まり、誰もステップアップできない

「自分でやる方が早い」は便利なようで、実は未来の成長を奪う行動なのです。

2.なぜ任せられないのか?(上司の本音)

上司に聞くと、よくこんな理由が返ってきます。

  • 「教える時間がない」
  • 「失敗されたら困る」
  • 「自分がやった方が早い」

でも本音はもっとシンプルです。

  • 教えるのが面倒
  • 失敗が怖い
  • 「自分がいないと困る」と思いたい

つまり、上司自身も任せたいけれど方法がわからない場合が多いのです。

3.成功事例:任せることで劇的に変わった会社

ある製造業の課長Aさんは、毎日20時まで残業していました。
仕事はきっちりしていましたが、全部自分でやってしまうタイプ。

そこで次の3つのことを実施していただきました。

  1. 10分で終わる定型業務を部下に渡す
  2. 中間チェックを1回だけ入れる
  3. 部下ができたら、必ず感謝を伝える

すると——
3か月後には残業が半分に。部下2人も頼もしくなり、職場の雰囲気も改善。

Aさんは「自分が抱えていたのは“仕事”じゃなくて“思い込み”でした」
と話していました。

任せることは、上司も部下も救う力になります。

4.上手な「任せ方」の3ステップ(誰でもできる版)

① 仕事のゴールをはっきり伝える

  • 何を作るのか
  • いつまでに必要か
  • どれくらいのレベルでOKか

例:「来週の打合せ用に、A4で1枚の要点まとめ。箇条書きでOK。」

② 中間チェックを1回だけ入れる

丸投げではなく、途中で軽く方向性を確認する。
→ これだけで大きなミスはほぼ防げます。

③ できたら、まず「ありがとう」

質の改善点は後で言えばOK。
部下が「またやってみたい」と思える空気を作ることが大事です。

抱え込みは“環境のせい”でもある(組織の責任)

上司だけが悪いわけではありません。

  • 人手が足りない
  • 評価が「自分の成果」中心で、「育てた成果」が評価されない
  • 業務量が多すぎて教える時間が取れない

このような構造があると、どんな優秀な人でも抱え込みます。

会社側も
「育てた上司を評価する」「業務を分散する」「マニュアルを作る」
など、仕組みから支える必要があります。

まとめ

任せることは、上司の負担を減らし、部下を育て、チームを強くします。
最初は10分の小さな仕事からで大丈夫。
段階的に任せれば、上司も部下も自然と成長していきます。

抱え込み上司は、方法を知らないだけ。
組織の仕組みが原因の場合もあります。

ひとりで背負うより、チームで育て合う方が強い。
小さな一歩の積み重ねが、職場の未来を大きく変えていきます。


執筆:埼玉県熊谷市の社会保険労務士・竹内由美子(中小企業の人と職場の課題をサポート)

「もしかしてうちの職場も当てはまるかも」と感じたら、早めにご相談ください。状況を整理し、必要に応じて改善策や対応方法をご提案いたします。