はじめに:「この人が辞めたら困る」から始まる職場の歪み
「この人が辞めたら困る」
「この人だけは特別」
経営者なら、一度はそう思ったことがあるのではないでしょうか。
実際、社長業は孤独です。だからこそ、わかってくれる人には自然と感謝も深まります。
しかし、その特別扱いが、知らないうちに職場の空気を変えてしまうこともあります。
社長のえこひいきは、どこから生まれるのか
多くの社長がえこひいきをするのは、「依存」と「安心」の裏返しです。
たとえば、
- 「この人なら自分の考えを理解してくれる」
- 「任せておけば大丈夫だろう」
- 「他の社員より信頼できる」
そんな安心感が、次第に特別扱いに変わっていきます。
でも、その状態はとても危険です。なぜなら、「この人がいないと困る」と感じた瞬間に、その人に依存する組織ができあがってしまうからです。
感情を仕組みに変える3つの視点
「えこひいきをやめよう」と思うだけでは、また元に戻ってしまいます。
人の感情は変えられません。だからこそ、仕組みでブレを防ぐことが大切です。
① 感謝は「お金」ではなく「言葉」で伝える
特別扱いは不公平を生みますが、感謝の言葉は公平に伝えられます。
「いつも助かっている」「ありがとう」を日常的に伝えるだけで、職場の信頼は回復します。
② 「人」ではなく「仕組み」に依存する
「この人がいないと困る」ではなく、「この仕組みがあるから大丈夫」という状態をつくる。
属人化ではなく分担・共有・引き継ぎのルールを整えることが、最大のリスク回避です。
③ えこひいきのエネルギーを「育成」に変える
「この人を伸ばしたい」という想いは素晴らしい。
その情熱をチーム全体の成長に広げられたとき、組織は一段と強くなります。
優しさを「ルールの中」で活かす
経営者の優しさは素晴らしい力です。
でも、それを気分で発揮すると、不公平とうつります。
優しさは、ルールの中でこそ信頼に変わる。
感情ではなく、明確なルールと評価基準の中で、誰もが同じスタートラインに立てる仕組みをつくる。
それこそが、会社を長く続けるリーダーの本当の優しさです。
まとめ:信頼されるリーダーの優しさとは
「えこひいき社長」は、決して悪人ではありません。
人を大切にしたい、感謝を伝えたい。その思いが少しズレただけなのです。
けれど、信頼は平等の上にしか成り立ちません。
- 感謝は、仕組みの中で伝える。
- 優しさは、ルールの中で守る。
- 信頼は、行動の一貫性で築く。
誰か一人を特別にするよりも、みんなが安心して働ける職場をつくる。
それが、真のリーダーシップの形です。
執筆:埼玉県熊谷市の社会保険労務士 竹内由美子(中小企業の人と職場の課題をサポート)
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