入社してすぐ辞める社員が増える理由と対策/リアリティショックを防ぐには?

はじめに:入社してすぐに辞める社員がいるのはなぜ?

「せっかく採用したのに、数日で辞めてしまった」
そんな話を、近年は中小企業でもよく耳にします。

しかも、退職届すら出さず、連絡が取れなくなる。
人事担当者にとっては、何が起きたのかわからないまま対応に追われる、頭の痛い問題です。

無断欠勤・音信不通の背景にある「心理的離脱」

会社にとって最も困るのは、連絡が取れないことです。
しかし、それは突然起きた出来事ではありません。

実際には、「心が離れていくプロセス」があります。

  1. 「思っていた仕事と違う」と感じる
  2. 相談する相手がいない
  3. 注意される → 「自分は向いていない」と思う
  4. 翌朝、行く気力がなくなる

つまり、「辞める」より先に「つながりが切れている」のです。
これがリアリティショックの正体です。

現場であったケース

ある建設会社では、新人スタッフが入社3日目で出勤してこなくなりました。
上司が電話しても出ず、LINEも既読にならない。

数日後、本人から届いたメッセージはこうでした。

「思っていた仕事と違っていました。もう行けません。」

実はその職場、初日に丁寧なオリエンテーションが行われず、新人は「何をしていいかわからないまま」放置されていたのです。

本人は「期待に応えられない」と感じ、会社は「やる気がない」と受け取る。
このすれ違いが、リアリティショックを深めていました。

入社してすぐ辞める主な理由

1. 労働条件が入社前の説明と違った

  • 求人票や面接での説明と実際の勤務条件が異なると、「騙された」と感じる瞬間に信頼が崩れます。

※ 信頼の破綻が一番早く離職を生みます。

2. 人間関係・ハラスメント

  • 上司との相性や、ちょっとした指導が「パワハラ」と受け止められることも。
  • 実際にはどちらが悪いというより、コミュニケーション不足や相性の問題であるケースが少なくありません。

3. リアリティショック(理想と現実の落差)

  • 「思っていた仕事と違った」「自分の居場所がない」と感じた瞬間、人は逃げることで心を守る選択をします。

会社ができる対策は?

1. 採用時に“リアル”を伝える

「うちは忙しい時期は残業もあります」「接客は感情労働です」
など、良い面だけでなく“現実”も正直に伝える。それが、後の信頼につながります。

2. 初日フォローを定例業務にする

入社初日は、“不安と緊張がピーク”です。
最初の数時間で感じた印象が、定着率を大きく左右します。

  • 上司や先輩が「あなたを歓迎しています」と伝える
  • 昼休憩を一緒にとる
  • 一日の終わりに「今日はどうだった?」と声をかける

こうした安心の小さなサインが、心の離脱を防ぎます。

3. 相談できる窓口を明確にする

新人が悩みを抱えても「誰に話せばいいかわからない」環境では、離職まで一直線です。

  • フォロー担当者を決めておく
  • 「困ったことがあれば、まず○○さんへ」と伝える
  • 月1回のフォロー面談をルール化

孤立させない仕組みが、会社を守ります。

社労士の現場から見える「本当の離職防止策」

離職を減らす秘訣は、「辞めないように縛ること」ではなく、「つながりを切らせないこと」です。

採用後にいきなり成果を求めるのではなく、「この会社で成長できそうだ」と感じてもらう関わりが必要です。

定着率が良い職場ほど、次の共通点があります。

  1. 初日の印象が良い
  2. 上司が人として話しかける
  3. ミスへのフォローが早い

まとめ:リアリティショックを防ぐのは、人間関係

「入社してすぐ辞める人」を完全にゼロにすることはできません。
しかし、“辞めたくならない職場”にすることはできます。

  • 採用時のリアルな情報提供
  • 初日のフォロー
  • 孤立させない仕組みを整える

ことで、人は会社に「居場所がある」と感じます。

人材確保の難しい今こそ、採用後の“定着支援”が会社の未来を守る鍵です。


執筆:埼玉県熊谷市の社会保険労務士・竹内由美子(中小企業の人と職場の課題をサポート)

「もしかしてうちの職場も当てはまるかも」と感じたら、早めにご相談ください。
状況を整理し、必要に応じて改善策や対応方法をご提案いたします。

関連記事