扶養の範囲内で働くメリット・デメリット/「損得」よりも長期的な安心を

はじめに

「もう少し働きたいけれど、扶養から外れるのは不安」
「扶養の範囲内で働いた方が得ですよね?」

そんな声をパート・主婦の方からよく聞きます。

確かに「扶養の範囲」には「税金の壁」と「社会保険の壁」があり、それを超えると手取りが変わります。


【この記事の読み方】
この記事では、細かい金額や計算式ではなく、「扶養の壁をどう考えるか」という視点をお伝えします。
具体的な金額や条件は、制度改正や働き方によって変わるため、詳しくはお勤め先や社労士にご確認ください。

扶養の範囲には2つの「壁」がある

扶養の範囲には、大きく分けて2つの「壁」があります。

  1. 税金の壁
    年収が一定額を超えると、所得税がかかり始めます。また、配偶者控除の金額も変わるため、世帯全体の税負担が増えることがあります。
  2. 社会保険の壁
    年収が一定額を超えると、配偶者の社会保険の扶養から外れ、自分で健康保険料・年金保険料を支払うことになります。

※具体的な金額や条件は、制度改正や働き方によって変わります。

扶養内で働くメリット・デメリット

【メリット】

  • 税金・社会保険料の負担が少ない
  • 時間の融通が利き、家庭との両立がしやすい

【デメリット】

  • 担う仕事の範囲が限定的になりやすい
  • キャリアアップや、時給アップの機会が限られる

短期的には安心感がありますが、長期的に見ると「成長の機会」を失うリスクもあります。

なぜ「働き控え」がなくならないのか

税金の壁は近年引き上げられましたが、現場の声は少し違います。

実際に立ちはだかるのは、社会保険の壁です。

社会保険の壁を超えた瞬間、健康保険料や年金保険料が発生します。
「え、税金より高いの!?」
はい、その通り。社会保険料の負担の方がずっと大きいのです。

せっかく時給を上げても、手取りがほとんど変わらない。むしろ一時的に減ることさえある。
そんな現実を知ってしまうと、「だったら働かない方がマシかも…」という心理が生まれてしまうのです。

長期的な視点:「壁」を超えた先のメリット

けれど、を気にしてブレーキを踏んだままではもったいない。

1.社会保険に加入するメリット

  • 傷病手当金や出産手当金などの給付が受けられる
  • 厚生年金によって将来の年金額が増える
  • 雇用保険で失業給付や教育訓練給付が利用できる

といった保障がつきます。

2.自分の人生のメリット

「壁の内側」にとどまるかどうかを決める前に、少し立ち止まって、こんなことを考えてみてください。

  • 将来の老後資金や年金はどうなるか
  • 配偶者が病気やケガで働けなくなったら…
  • もし一人で生活を支えることになったら…

こう考えると、短期的な損得よりも大切なのは、“自分の人生をどう生きたいか”という視点かもしれません。

誰かの扶養に収まる安心も大事。

でも、自分の力で収入を得るスキルや経験は、変化の激しいこの時代にこそ、何よりの保険になります。

壁の向こうには、手取り以上の“成長と安心”が待っています。

体験談:壁を超えて気づいたこと

私自身も子供が小さい頃は扶養の範囲内で働いていました。
当初はありがたく、安心でもありました。

けれど、仕事が面白くなってくるにつれて、「もっと挑戦したいのに、壁のせいで働けない」と感じるようになったのです。

思い切って扶養を超えて働くようにしてからは、責任ある仕事を任され、スキルも磨かれていきました。

結果的に、「長い目で見れば、こっちの方がずっと得だった」と実感しています。

  • 働くことは損得じゃなく、自分の可能性を広げること
  • それが一生の安心

そう気づけたのは、この経験があったからです。

まとめ:現場で感じること

労務の現場でも、「壁を気にして働けない」という相談は本当に多いです。
扶養の範囲内で働くかどうかは、人それぞれの事情によって異なります。

家庭の事情や健康状態、ライフステージによっては、扶養の範囲内で働くことが合理的な選択である場合も多くあります。

ただ、もし「本当はもっと働きたいのに、壁が怖くて止まっている」と感じているなら、一歩踏み出す価値はあります。

社会保険の加入は損ではなく、“将来の安心の先払い”
働くことは収入だけでなく、自分の人生を自分で支える力につながります。

数字だけに縛られず、「これからの自分の人生をどう生きたいか」という視点で、働き方を選んでいけたら素敵ですね。


執筆:埼玉県熊谷市の社会保険労務士・竹内由美子(中小企業の人と職場の課題をサポート)

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