はじめに
「うちの基本給、これでいいのかな?」
経営者なら一度は悩んだことがあるのではないでしょうか。
法的には、最低賃金以上であれば問題ありません。でも、現実はそれだけでは済みません。
なぜなら、
- 「うち、給料安いから辞めます」
- 「この会社、給料が他の会社より安いから、応募するのやめます」
この一言で、採用も定着も一瞬で崩れてしまうことがあるからです。
求職者が見ているのは「数字」だけではない
「求人を出しても応募が来ない」
「面接で良い人材を見つけても辞退される」
そんな会社に共通しているのは、基本給の設計があいまいなことです。
求職者が重視する条件は、アンケートでもほぼ共通しています。
- 給与や休日が少しでも多い
- 残業が少ない
- 有給休暇が取りやすい
- 休みやすい雰囲気(特にパート・アルバイト)
そしてもう一つ大きいのが、「安心感」です。
- 小さい会社よりは大きい会社
- 新しい会社よりは歴史のある会社
- 退職金よりも「今の給与が高い会社」
つまり「長く安心して働けるかどうか」を、給与から判断しているのです。
基本給の設計=会社の約束
基本給をどう決めるかは、会社の価値観と方向性を映す鏡です。「どんな人に、どんな貢献を期待しているか」。
たとえば、
- 新人には「育つ期待」を込めて
- ベテランには「支える力」を評価して
- 管理職には「成果と責任」を明確に
このように役割に応じて段階的に設計すると、社員も将来をイメージしやすくなります。
「入社後の給与の伸び」こそ最大の差別化
無事入社しても、その後の給与がずっと横ばいではモチベーションは続きません。「ここでは頑張っても上がらない」と思われた瞬間、人は離れていきます。
逆に、
- 「努力すれば上がる」
- 「自分の成長を見てくれている」
と感じられる会社は、驚くほど定着します。
基本給の設計は、採用対策だけでなく“辞めない会社づくり”の第一歩なのです。
まとめ
- 給与は最低賃金だけではなく、世間相場+会社の価値観で決める
- 給与は「期待と成長のメッセージ」
- 上がらない給与は「静かな退職」の引き金になる
基本給の決め方は、会社が社員に伝える「無言のメッセージ」。そのメッセージをどう設計するかが、職場の未来を決めます。
執筆:埼玉県熊谷市の社会保険労務士・竹内由美子(中小企業の人と職場の課題をサポート)
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