はじめに:「A商事の田中から電話です」
オフィスでよくあるやりとりです。電話を取ったスタッフが言います。
「A商事の田中から電話です」
この一言、何気なく聞き流していませんか?
もし取引先の方が、その場にいたらどう思うでしょう。
「呼び捨て?」と、ちょっと引いてしまうかもしれません。
なぜ呼び捨てが起きてしまうのか
内勤スタッフや事務担当は、取引先と直接会う機会が少ないもの。
だからこそ、営業担当のようにお客様対応の感覚が薄れがちです。
悪気はない。ただ、日常の習慣の中で「呼び捨て」が当たり前になってしまうのです。
でも、そのお客様がいるからこそ会社が回り、給料も支払われています。
呼び方ひとつにも、会社の姿勢がにじみます。
呼び捨てが与える静かな印象
「たかが呼び捨てぐらいで」と思う人もいるかもしれません。
取引先は、意外とよく聞いています。そして、こう感じています。
「この会社、ちょっと雑だな」
「うちのことを下に見てるのかな」
その小さな違和感は、やがて「信頼できない」につながります。
言葉の乱れは、やがて行動の乱れに変わります。
連絡が雑、対応が遅い、報告が抜ける。
そんな会社全体の空気をつくってしまうのです。
言葉づかいは「マナー」ではなく「姿勢」
呼び捨てを直すことは、礼儀を整えるというより、「感謝を伝える表現を取り戻すこと」です。
たとえば、「A商事の田中様からお電話です」
それだけで、相手への敬意と温かさが伝わります。
この一言が、感じのいい会社だなという印象を残します。
経営者・管理職ができること
社員の言葉づかいは、経営者の姿勢の鏡です。呼び方ひとつで、会社の文化が伝わります。
今からでもできることは、たとえば、
- 電話対応マナーを共有するミニ研修を開く
- 「呼び方ルール」を社内で統一する
- 社長自身が率先して「さん付け」で話す
こうした積み重ねが、社外だけでなく社内の信頼も高めます。
まとめ:呼び方ひとつに、心を込めて
忙しいと、こうした小さな気配りを忘れてしまいがちです。
でも、呼び方ひとつにも、相手を大事にする気持ちは表れます。
私自身も忘れないように、自戒を込めて書きました。
編集後記
経理をしていた頃、銀行や郵便局によく行っていました。銀行ではお客様を「〇〇様」、郵便局では「〇〇さん」と呼んでいました。その銀行は、とても丁寧で親切な人ばかりでした。
一方、販売会社に勤めていたときは、お客様を呼び捨てでつなぐのが当たり前でした。顧客対応もどこか雑で、会社全体の雰囲気も荒れていたように思います。
この経験を通して感じたのは、言葉づかいひとつで、会社の印象も、仕事の姿勢も変わるということ。その気づきを、今回の記事に込めました。
執筆:埼玉県熊谷市の社会保険労務士・竹内由美子(中小企業の人と職場の課題をサポート)





