優秀な部下に甘えない/「できる人」が静かに離れていく職場の共通点

はじめに:頼りになる人ほど、限界を超えている

どこの職場にもいます。頼めばすぐ動いてくれる、気が利く、早い、正確。
いわゆる“できる人”

最初は、まわりの信頼を感じてうれしいものです。
「頼りにされている」と思えば、多少の負担も引き受けたくなる。

でも、その積み重ねがいつの間にか、「頼られている」から「押しつけられている」に変わります。

1.優秀な人が抱える“静かな不満”

優秀な部下ほど、愚痴を言いません。だからこそ、周囲は気づきません。
でも、心の中ではこう感じています。

  • 「なんで私ばかり?」
  • 「できない人は注意されないのに、私だけ評価が上がらない」
  • 「便利な人と思われているのかも」

最初は一瞬の違和感です。
それが積もると、表情が少しずつ曇り、次第にこう変わっていきます。

  • 声をかけられても反応が遅くなる
  • 会議で発言が減る
  • 「転職」という言葉が頭をよぎる

気づけば、職場の一番の戦力が心のシャッターを下ろしているのです。

2.会社側の“無自覚な甘え”

この状況は、部下の問題ではありません。多くの場合、会社(上司)側の甘えです。

「頼んだ方が早いから」「あの人ならミスしないから」
そう思って、優秀な人にばかり仕事を振っていませんか?

結果として、

  • 負担が集中し、
  • 本来やるべき人は育たず、
  • 優秀な人が疲弊して去っていく。

これは、組織にとって最も高くつく人材損失です。

3. 対策①:まず「役割」と「責任」を明確に

優秀な人に頼る前に、まずは構造を見直すことです。

  • 誰が何を担当するのか
  • その業務をどう引き継ぐのか
  • 「助ける」と「代わりにやる」を区別する

役割を整理し、担当者が責任を持ってやる仕組みを作りましょう。
「できない人に代わってやる」のではなく、「できるように育てる」が基本です。

4. 対策②:「評価」と「感謝」をセットに

優秀な人ほど、黙ってがんばります。だからこそ、上司が意識して認めることが大切です。

  • 「助かった」と口に出す
  • 周囲の前で成果を共有する
  • チームの成果を支える“原動力”として評価する

それだけで、優秀な人のモチベーションは大きく変わります。

5. 対策③:「上司の甘え」を手放す

上司自身も、自分を客観的に見直す必要があります。

  • 「気づいたら、できる人にばかり頼っていないか?」
  • 「その依頼、本当にその人でなければダメか?」

優秀な部下に頼るのは悪いことではありません。
でも、頼ることが前提になった瞬間、それは“甘え”になります。

まとめ

優秀な人は、便利な人ではありません。彼らは、組織の未来を支える“土台”です。

その力を活かすには、

  • 役割を明確にする仕組み
  • 努力をきちんと認める文化
  • 上司の「頼りすぎ」を自覚する姿勢

が欠かせません。

「できる人が辞める会社」ではなく、「できる人が育つ会社」へ。
それが、長く続くチームの条件です。


執筆:埼玉県熊谷市の社会保険労務士・竹内由美子(中小企業の人と職場の課題をサポート)

「もしかしてうちの職場も当てはまるかも」と感じたら、早めにご相談ください。状況を整理し、必要に応じて改善策や対応方法をご提案いたします。

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