退職する人の本音
私の仕事柄、退職する人と手続きについて話をする機会がよくあります。
たとえば、
「健康保険の喪失証明書、雇用保険の離職票はいつ頃届きますか?」
といった事務的な質問が多いです。電話や対面などでほんの数分程度です。
そんなときに、
「退職の理由はなんですか?残念です」と聞いてみると、
ほとんどの人が本音をこぼされます。
多いのは「職場の人間関係」「上司との折り合い」、
小さい組織ですと「社長の言動」が理由になることも少なくありません。
そして、私が事前に聞いていた理由とはほとんど一致しません。
退職理由のリアルな事例
事例① 上司の理不尽な指示
「いつも急に言うだけで、期限だけ厳しく責められる。やり方も説明してくれない。相談しても『考えろ』の一言。もう無理だなと思った。」
ポイント: 上司の一方的な態度、育成放棄
事例② 社長のパワハラ
「社長の機嫌が悪いと怒鳴られるので、毎日顔色をうかがっていた。何度か改善をお願いしたが、『甘えだ』と言われ、もう耐えきれなかった。」
ポイント: トップの影響力と、指摘を無視する態度
事例③ 人間関係の孤立
「同僚の輪に入れず、挨拶しても無視されることが続いた。上司に相談しても『気にしすぎじゃない?』と言われ、心が折れた。」
ポイント: 人間関係のトラブルを軽視する管理職
事例④ 成長機会の欠如
「同じことの繰り返しでスキルも上がらず、評価も変わらない。ずっとこのままかと思ったら、他の会社で挑戦したくなった。」
ポイント: キャリアの停滞と不安
本当の理由を隠すのはなぜか
多くの人は、退職する際に本音を表立って言いません。
なぜなら、
- 最後に波風を立てたくない
- 過去に何度も「困っている」と訴えたが改善されなかった
- 話を聞くだけで何も動いてくれなかった
こうした経験が積み重なり、最終的に「仕方がない」とあきらめて会社を去っていくのです。
一見、円満退職に見えても、実際は深い不満や諦めが隠れています。
管理職・経営層に考えてほしいこと
日頃から「人がいなくて困ってる」「入ってもすぐに退職してしまう」
と人材の定着に悩む会社には、必ず何らかの原因があります。
採用コストや教育コストをかけ続ける前に、ぜひ立ち止まって考えてみませんか?
たとえば、
- これまでの、部下や社員への対応はこれで良かったのか
- 自分や管理職の言動が、退職の一因ではなかったか
- どう改善すれば、社員が安心して働ける環境になるのだろうか
と、このような問いに向き合うことが、人が辞めない組織になる第一歩です。
人の定着は、単なる採用活動ではなく、日頃のコミュニケーションと信頼の積重ね
で決まります。
まとめ
トップや管理職が少し意識を変えるだけで、職場は驚くほど働きやすくなります。
退職理由を「他人事」にせず、原因と向き合い改善に動くことが、
優秀な人材に選ばれる会社になる一番の近道かと思います。
どう取り組めばいいのかわからないときは、
社労士など外部の専門家の知恵も活用してください。
それが、求人広告に何十万円もかけるより、ずっと価値のある投資になります。
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