はじめに:「最初の3日」で職場の空気は決まる
「新入社員が早々にトラブルを起こして困った」という相談は、中小企業でよく耳にします。
「まじめそうだったのに…」「注意したら逆ギレされた」
経営者や上司が戸惑うのは、本人に悪気がないケースが多いからです。
彼らは社会人としての基本や、職場での立ち居振る舞いを、まだ学ぶ機会がなかっただけ。
でも、その「最初のズレ」を放置すると、たった数日で職場の信頼関係が崩れます。
困った新入社員が生まれる背景
最近の新入社員は、次のような特徴を持つことが少なくありません。
- 学生アルバイト経験しかなく、職場での「けじめ」を知らない
- SNS文化の中で、「注意=否定」と感じやすい
- 家庭や学校で「叱られる」経験が少ない
つまり、「どう接していいのか」がわからないのです。
最初の数日で、叱られ慣れていない若手が戸惑い、上司も遠慮して注意できない。
その結果、小さな違和感が大きなトラブルへ発展します。
【事例】現場であったケース
ある製造業の会社で、新入社員が初日に遅刻してきました。
「すみません、バスが遅れて…」と平然と話す彼に、上司は注意しました。
「社会人として、始業時間に間に合うように出るのが基本だよ」
しかし本人は、「そんなに怒らなくても」と不満顔。
翌日からは無断で休憩を延長し、やがて周囲の空気がピリついていきました。
後から聞けば、彼は前職で「遅刻しても怒られたことがなかった」そうです。
つまり、「叱られること自体が想定外」だったのです。
このケースのように、本人の常識と会社の常識がずれていると、小さな注意が人格否定のように伝わってしまうことがあります。
注意して改善する人、しない人
注意してすぐ直る人は、「あ、そうだったのか」と学べる素直さがあります。
一方、改善しない人は「なぜ注意されたのか」を理解していません。
たとえば、
「なんでそこまで厳しいの?」
「このくらい、別にいいじゃないですか」
こうした反応が出る背景には、会社という共同体のルールを学んでいないという現実があります。
結論:最初が肝心! 3つのルールを明確に
いろいろなケースを見てきて思うのは、やはり最初が肝心!ということです。
ルールを早めに共有することで、社員も安心し、上司も迷わなくなります。
- 面接で伝える
「うちの会社では時間厳守と挨拶を大切にしています。それが守れない人は向きません」と最初に「何を大事にしている会社か」を明確に伝えましょう。 - 入社時に書面で確認する
誓約書・就業ルールなどを使い、「最低限、これだけは守ってください」と説明します。
曖昧さをなくすことで、後のトラブルを防げます。 - 指導のステップを決めておく
口頭注意 → 行動を一緒に確認 → それでも改善しなければ書面で指導」など、手順をあらかじめ決めておくと、現場の上司も迷いません。
ルールを示すことは「支配」ではなく「安心」
ルールを伝えるのは相手を縛るためではなく、
「ここまでが安全」「ここからが危険」という安心の枠を共有するためです。
人は、何を求められているのかわからないと不安になります。
だからこそ、最初にルールを見せることが、人を育てる第一歩になります。
まとめ:ルールは信頼の土台になる
- 面接で価値観を伝える
- 入社時に書面で確認する
- 指導ステップを決めておく
この3つを徹底すれば、叱る文化ではなく、信頼して育てる文化が生まれます。
「最初が肝心」 それは罰ではなく、信頼を築く準備です。
新入社員の成長を信じるためにも、最初の3日を大切にしましょう。
執筆:埼玉県熊谷市の社会保険労務士・竹内由美子(中小企業の人と職場の課題をサポート)
「もしかしてうちの職場も当てはまるかも」と感じたら、早めにご相談ください。
状況を整理し、必要に応じて改善策や対応方法をご提案いたします。





