なぜ社員は何も言わなくなるのか。関係を立て直す5つの仕組み

はじめに:誰も本音を言わない

最近、こんな違和感はありませんか。

「気がついたら、社員の誰も本音を話さなくなっていた」
「会議で発言しても、誰も反応しない」
「退職の相談が、ある日突然やってくる」

怒鳴っているわけでもない。
理不尽なことをしているつもりもない。
それなのに、社員との距離だけが、静かに広がっていく。

多くの経営者は、ここでこう考えます。

  • 「もっと社員に誠意を見せよう」
  • 「心から謝罪しよう」
  • 「自分が変わらなきゃいけない」

しかし、信頼回復に必要なのは「誠意」ではなく「仕組み」です。

信頼は、いつ・どこで失われるのか

社員が経営者を信頼しなくなる理由は、大きく3つあります。

理由1:言っていることと、やっていることが違う

朝礼:「社員を大切に」と語る
実際:数字だけを重視、協力や努力を評価しない

→ 社員:「どっちが本音なんだろう」
 この小さな違和感が積み重なり、やがて「どうせきれいごと」という諦めに変わります。

理由2:判断の基準が見えないとき

・ある人には厳しく、ある人には甘い
・忙しいときと暇なときで評価基準が変わる
・「なぜその決定をしたのか」が説明されない

→ 社員:「何を基準に頑張ればいいのか分からない」
 信頼されなくなるのは、判断の理由が見えないことです。

理由3:声を上げても、何も変わらないとき

・提案してもスルーされる
・指摘すると機嫌が悪くなる
・結局、何も改善されない

この瞬間、社員の中でスイッチが切れます。
「もう言うのはやめよう」

ここから、表面上は穏やかでも、組織は確実に弱っていきます。

信頼回復に必要なのは「反省」ではなく「再現性」

信頼を失ったと気づいたとき、経営者がまずやろうとするのは「自分の態度を正すこと」です。

でも、それは長くは続きません。

  • 忙しくなると忘れる
  • 感情の起伏で簡単に崩れてしまう
  • 状況が変わると元に戻る

これらは、個人の努力に頼る方法であり、継続しません。
必要なのは、誰がやっても、調子が悪い時でも機能する「仕組み」です。

社員との関係を立て直す5つの仕組み

仕組み①:判断の「理由」を必ず説明する

決定事項だけを伝えると、社員は不安になります。

× 悪い例○ 良い例
「来月から残業を減らします」「来月から残業を減らします。理由は3つあります。
(1)健康面のリスクが出ている
(2)業務の無駄が見えてきた
(3) 法令上のリスクを避けたい」

ポイント

  • 判断+理由はワンセットで
  • 理由は「正しさ」より「納得感」

仕組み②:情報の「ブラックボックス」をなくす

知らされない組織では、不信感が膨らみます。

やること

  • 月1回の簡単な経営報告
  • 数字と方針を「わかる範囲で」共有
  • 質問できる時間を必ず用意

すべてを公開する必要はありません。
「隠していない」という姿勢が信頼につながります。

仕組み③:1on1を「不満回収の場」とする

雑談ではなく、目的を明確にします。
毎回聞く質問はこの3つだけ

  1. 最近、やりづらいことは?
  2. 会社に変えてほしいことは?
  3. 私(経営者)に言いにくいことは?

重要なのは、その場で解決しなくても、記録して次につなげることです。

仕組み④:評価を「感覚」から「言葉」に変える

評価が曖昧だと、信頼は必ず壊れます。

  • 何を評価するのか
  • 何ができれば評価が上がるのか
  • なぜこの評価なのか

これを言葉と紙で残すだけで、「好き嫌いで決めている」という疑念は消えていきます。

仕組み⑤ 改善の進捗を見える形で残す

社員はこう見ています。「あの話、どうなったんだろう」と。

そこで、

  • 「課題」「対応状況」「期限」「担当」を一覧にし、
  • 「できたこと」「できていないこと」を正直に共有します。

これだけで、「言えば変わる」という信頼が戻ります。

まとめ:信頼は「人柄」ではなく「構造」で取り戻せる

信頼は、一度失うと簡単には戻りません。でも、戻せないものでもありません。

大切なのは、

  • 誠意を見せ続けられる構造をつくること
  • 感情に頼らず、仕組みで関係を支えること

今日からできること5つ

  1. 判断の理由を必ず説明する
  2. 月1回、経営の情報を共有する
  3. 定期的に1on1を行う
  4. 評価基準を明文化する
  5. 改善リストを作成し、進捗を公開する

信頼は、仕組みで守れます。


執筆:埼玉県熊谷市の社会保険労務士・竹内由美子(中小企業の人と職場の課題をサポート)

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