はじめに:職場を壊すのは“無自覚な一言”
「そんなことも知らないの?」。
たった一言で、職場の空気が凍りつくことがあります。
いま、社内で最も深刻なのは“無意識の見下し”です。
怒鳴らない、叱らない上司でも、表情・態度・口調の端々に「上から目線」が滲んでいれば、部下は静かに距離を置き、やがて辞めていきます。
1.見下す上司が信頼を失う理由
人は、自分を尊重してくれる相手にこそ心を開きます。反対に、見下されると「どうせ言っても無駄」と感じ、沈黙します。
表面的には何も起きていないようでも、その職場はすでに静かな崩壊が始まっています。
2.経験や知識を振りかざす「勘違い」
「自分のころはもっと厳しかった」「そんなことも知らないのか」 こうした言葉の裏には、「自分は上だ」という無意識の優越感があります。
本当に信頼される上司は、教える時も「一緒に考えよう」という姿勢を崩しません。
あるべき対応は、
- 「それはこういう意味だよ」と教える
- 「ここは自分でも調べてみて」と促す
と伝えるだけで、受け取る側の心はまったく違います。
3. 公の場での「見下し言動」は空気を凍らせる
- 「そんなことも分からんのか!」と会議で怒鳴る。
- ため息をつく。
- がっかりした顔を見せる。
その一瞬の態度が、周囲全体の士気を下げます。
部下は「自分は評価されていない」と感じ、挑戦をやめます。
恐怖よりも“尊重”が職場の空気を温めます。
4.「厳しい指導」と「侮辱」の決定的な違い
厳しい指導 | 侮辱的な言動 |
---|---|
行動や成果にフォーカス | 人格や存在を否定 |
改善を促す | 恐れや劣等感で支配 |
成長を支援する姿勢 | 優越感を示す姿勢 |
上司の目的が「育てる」ではなく「黙らせる」に変わった瞬間、信頼は完全に消えます。
5. 上司本人が気づいていないケースとと対処法
見下す上司ほど、「自分は指導している」と思っています。でも、受け取る側には“攻撃”にしか感じられません。
対応策
- 勇気を出して「今の言い方は少しきつく感じました」と伝える
- 信頼できる上司や人事に相談
- 社内相談窓口・社外専門家(社労士など)へ相談
我慢は美徳ではありません。沈黙が職場を壊すこともあります。
まとめ:尊重の文化が職場を強くする
人は尊重されると、自ら成長しようとします。
一方、見下されると、守りに入り、組織全体の動きが鈍ります。
尊重とは、
- 部下を笑いものにしない
- 知識や経験は押しつけず共有する
- 指導は厳しくても、人格は否定しない
“強くて優しい職場”をつくる近道は、まずは上司が「自分の言動」を見直すことからです。
🖋執筆:埼玉県熊谷市の社会保険労務士 竹内由美子(中小企業の人と職場をサポート)
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