はじめに:同じミスが起きたとき
「またクレーム?」「なんで同じミスを繰り返すんだ!」
注意はしている、指示も出している、放置しているわけではない。
それなのに、なぜかトラブルが減らない。むしろ、前より増えている気さえする。
そんなとき、心のどこかでこんな思いがよぎっていませんか。
- 最近の社員は、責任感が足りないのでは
- もっと緊張感を持ってほしい
- 何度言えば分かるのか
しかし、ミスやクレームが止まらない原因は、社員の能力や意識ではないケースがほとんどです。
問題は、もっと別のところにあります。
経営者が知らないうちに陥る「負のループ」
ミスが起きる、クレームが入る。すると、無意識にこう考えます。
「誰がやったんだ?」
「なぜ防げなかった?」
「責任を明確にし、二度と起こらないようにしたい。」
その気持ちは、経営者として当然です。
しかし、現場ではこんな連鎖が起きていきます。
- 叱責されることを恐れて、報告が遅れる
- 小さなミスほど、隠される
- 問題は表に出たときには、すでに大きくなっている
そして、責任感のある社員ほど疲弊し、何も言わず会社を去っていきます。
こうして組織は発言や挑戦が減り、組織全体のパフォーマンスが低下します。
なぜ「犯人探し」は逆効果なのか
犯人探しが続く職場では、社員の意識はこう変わります。
- 正直に言うより、黙っていた方が安全
- 自分を守ることが最優先
- チームより、自分が責められないことが大事
すると、現場から消えるのは「相談」と「改善」です。
残るのは、表面上の反省と、同じミスの繰り返し。
本当は、誰も悪気などありません。ただ、安心して話せないだけなのです。
ミスが続く会社に共通する見えない問題
ミスやクレームが多い会社には、いくつかの共通点があります。
- 報告の仕方が、人によってバラバラ
- 教え方が属人化している
- 「聞いていない」「知らなかった」が頻発する
- 会議では、誰も本音を言わない
これらはすべて、仕組みが整っていないからです。社員のやる気や努力の問題ではありません。
組織を変える最初の一歩は「問い」を変えること
ミスが起きたとき、人を責める問いから、仕組みを見る問いへ変えてみます。
×「誰がやった?」→ ○「何が起きた?」
×「なぜ気をつけなかった?」→ ○「なぜ、そうなった?」
それだけで、社員はこう感じ始めます。
「怒られるだけじゃない」「ちゃんと改善しようとしてくれている」
この安心感が、報告と相談を取り戻します。
仕組みに目を向けた会社は変わる
実際に、報告の型を決める、振り返りの場をつくる、ミスを共有し責めずに改善する、それだけで、
- クレームが減る
- 現場から提案が出る
- 雰囲気が明るくなる
こうした変化は、3か月もあれば目に見えて表れます。
ある製造業の会社では、ミスが起きるたびに「誰の責任か」を追及する空気があり、報告が上がるまでに数日かかることも珍しくありませんでした。
そこで「まず何が起きたかを共有する」というルールに変えたところ、報告のスピードが格段に上がり、半年後にはクレーム件数が半分近くまで減りました。
まとめ:会社を変える視点
ミスを減らしたい、クレームをなくしたい、社員に成長してほしい。
その思いがあるからこそ、経営者は悩み、怒り、考え続けています。
だからこそ、最後にお伝えしたいのです。
「誰が悪いか」ではなく「何を変えるか」、「責める」より「整える」、「個人」ではなく「仕組み」
この視点に切り替えたときから、組織は少しずつ、しかし確実に動き出します。
変えるべき最初の一歩は、社員ではなく、経営者の見方です。
執筆:埼玉県熊谷市の社会保険労務士・竹内由美子(中小企業の人と職場の課題をサポート)
自社の「報告しやすさ」に不安がある方は、一度相談してみませんか。






