「研修受けてきました」「で、何か変わった?」…50万円が消えた日

「外部研修、受けてきました」

月曜日の朝。部下の佐藤が、社長の山田に報告しました。

「社長、先週の外部研修、受けてきました」
「おお、どうだった?」
「とても良い内容でした」

山田は満足そうに頷きました。「よし、じゃあ今日から頑張ってくれ」

1ヶ月後、何も変わっていなかった

1ヶ月後。山田は、佐藤の仕事ぶりを見て首をかしげました。
(研修を受けたのに、何も変わってないな)

「佐藤、研修で学んだこと、活かしてるか?」
「……活かそうとは思ってるんですけど」

「思ってるだけか?」


人事担当の鈴木が報告しました。「社長、今年の研修費用、50万円です」

「ご、50万円!?  で、成果は?」
「……正直、何も変わってないです」

山田は頭を抱えました。

研修が活きない3つの理由

山田は社労士に相談しました。
「研修を受けさせたのに、何も変わらないんです」

社労士は説明しました。「原因は3つあります」

  1. 目的が曖昧
    「とりあえず受けてきて」では、何を持ち帰るべきか分かりません。
  2. 研修後のアクションがない
    学んだ内容を「どう使うか」が設計されていないと、知識は数日で風化します。
    「良い話だったなぁ…」で終わるのが常です。
  3. 現場に戻ると元通り
    本人が意欲的でも、周囲が何も変わっていなければ、
    「一人だけ浮くくらいなら、前のやり方に戻ろう」と思ってしまいます。

山田は納得しました。

研修を行動変化につなげる3ステップ

社労士は3つのステップを提案しました。

【ステップ1】研修前に「ミッション」を伝える

✓ なぜこの研修を受けるのか(目的)
✓ 研修後に何をしてもらうか(ミッション)

(例)

  • 「来週の朝礼で、学んだことを5分間発表してもらいます」
  • 「研修内容をもとに、業務改善案を1つ提出してください」

人は「誰かに伝える」と分かっているとき、学び方が変わります。

【ステップ2】研修直後に「説明させる」

研修から戻ったら、学んだことを他の人に説明させます。
「説明する=復習」になり、理解が一気に深まります。 

【ステップ3】1〜3ヶ月後に「振り返り」

定期的に育成サイクルを回します。

  • 実践できたことは?
  • どんな成果が出た?
  • 続けるために必要な支援は?

このサイクルを回すことで、「知識 → 行動 → 習慣」に変わっていきます。

山田が変えたこと

それから、山田は仕組みを変えました。

次の研修のとき。
「田中、来週の研修、受けてもらうけど目的を伝えるね」

  1. 「今回の研修は、リーダーとしてのスキルを身につけるため」
  2. 「研修後、1週間以内に朝礼で発表してもらう」
  3. 「1ヶ月後の会議で、実践した結果を報告してもらう」

田中は真剣な顔で聞きました。「分かりました。しっかり学んできます」

3ヶ月後、変化が起きた

3ヶ月後。
「社長、研修で学んだ『傾聴』を実践したら、メンバーが積極的に意見を言ってくれるようになりました」

「良かったな」
山田は嬉しくなりました。(やっと、研修が活きた)

まとめ:現場を変えるのは「仕組み」

研修効果の差は、研修講師の質ではなく、上司のフォロー体制で決まります。

自己チェック:

  1. 研修前に「期待する成果」を伝えていますか?
  2. 研修直後に「実践の場」を作っていますか?
  3. 定期的に「振り返り」をしていますか?

この3つを回せば、研修は育成の仕組みへと進化します。

研修は、受けさせて終わりではありません。
学んだことを現場で実践させ、定着させる。これが本番です。


執筆:埼玉県熊谷市の社会保険労務士・竹内由美子(中小企業の人と職場の課題をサポート)

「研修を受けさせても、何も変わらない」「研修費用が無駄になっている気がする」
そんなときは、お気軽にご相談ください。

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