なぜ職場がギスギスするのか
ちょっとした行き違いから、目も合わせない、口もきかない。
職場のギスギスは、些細なことから始まります。
多くの管理職は「コミュニケーションは取っている」と言いますが、実際は業務連絡や指示だけ。本当の意味での「対話」がないことが、ギスギスの根本原因かもしれません。
「対話」と「業務連絡」の違い
対話とは、お互いの気持ちや考えを語り合うことです。
- 業務連絡:「この件、明日までによろしく」
- 対話:「最近忙しそうだけど、何か困ってることある?」
この違いが、職場の空気を決定づけます。
なぜ対話が効果的なのか
心理学では「自己開示の返報性」という原理があります。
人は自分の話を聞いてもらうと、相手に好意を持ち、信頼関係が生まれます。
また、カウンセリングで使われる「傾聴」の効果は科学的にも実証されており、話を聞いてもらうだけでストレスホルモンが減少し、心理的安全性が高まることがわかっています。
実例:15分の面談が組織を変えた
あるIT企業では、月1回の「雑談タイム」を導入しました。
業務の話は一切禁止。15分間、趣味や悩みだけを話す時間です。
最初は戸惑っていた社員も、3ヶ月後には「あの人、意外とこんな一面があったんだ」と打ち解け、チーム全体の雰囲気が変わったそうです。
対話を始める3ステップ
ステップ1:雑談から始める
いきなり深い話は難しいもの。まずは軽い雑談から信頼を築きましょう。
- 最近楽しかったこと
- 週末の過ごし方
- 子どもやペットの話
ステップ2:「感情」を含む質問をする
業務の話でも、感情を聞くことで対話になります。
- NG:「進捗どう?」
- OK:「先週のプロジェクト、実は私も不安だったんだけど、あなたはどう感じてた?」
自分の気持ちを先に開示すると、相手も話しやすくなります。
ステップ3:月1回、15分の時間を確保する
対話を、「特別なイベント」ではなく、日常の習慣にします。
具体的な設定例:
- 毎月第三金曜の15時から15分間
- 会議室ではなくカフェスペースで
- スマホは見ない、メモも取らない
このような小さな積み重ねが、信頼の土台を作ります。
「話したくない」社員への対応法
対話を始めようとしても、警戒する社員もいます。そんなときは、
- 無理に深掘りしない
「別に…」と答えたら、それ以上聞かない。「そっか、またいつでも話してね」と引きましょう。押しつけは逆効果です。 - 自分から先に開示する
「実は先週のプレゼン、すごく緊張してたんだよね」と自分の弱みを見せると、相手も話しやすくなります。 - 選択肢を与える
「今話せる?それとも来週がいい?」と相手に選ばせることで、コントロール感を持たせます。
対話で避けるべき3つのNG行動
せっかく始めた対話も、これをやると逆効果です。
- 一方的に話す → 聞き手に回ることを意識する
- すぐにアドバイスする → まずは共感を示す
- 「でも」「だって」で返す → 相手の話を否定しない
まとめ:いまから始める一歩
ギスギスした職場を変えるのに、特別なスキルは必要ありません。
今からできること:
誰か一人に「最近どう?」と声をかけてみてください。
そこから15分、じっくり話を聞いてみましょう。
心が通い合えば、仕事のクオリティも変わります。
小さな対話の積み重ねが、職場の空気を少しずつ変えていきます。
執筆:埼玉県熊谷市の社会保険労務士・竹内由美子(中小企業の人と職場の課題をサポート)
「もしかしてうちの職場も当てはまるかも」と感じたら、早めにご相談ください。状況を整理し、必要に応じて改善策や対応方法をご提案いたします。




