複雑な賃金体系が招く落とし穴
「社員の頑張りを正しく反映したい」
「モチベーションを高めるために手当を増やそう」
経営者としてこう考えるのは自然なことです。
しかし、複雑にしすぎた賃金制度は、かえって経営を圧迫するリスクがあります。
実際に、手当やインセンティブを頻繁に変更したことで、次のような問題が起きるケースを多く見てきました。
- 給与計算のミスが多発する
- 担当者が精神的に追い込まれ退職する
- 社員に「ルールが不透明だ」「社長の気分で変わる」と不信感を持たれる
- 助成金が不支給になる
シンプルな賃金制度は、会社の基盤を守る防波堤です。
シンプルな賃金制度がもたらす安心
賃金体系を簡潔にするメリットは、大きく分けて3つあります。
① 給与計算ミスが減る
手当が少なく運用ルールが明確なら、給与計算担当者が迷わず処理できます。
「うっかり計算漏れ」「計算式の間違い」がなくなり、余計なトラブルが減ります。
② 社員の信頼を得やすい
複雑なルールは「社長のさじ加減で変わる」と思われがちです。
一方、明快で一貫した制度は、社員に安心感を与えます。
「給与に納得できるか」は離職防止の大きなポイントです。
③ 法的トラブルや助成金不支給を防げる
就業規則や給与規定が複雑だと、運用のズレが生じがちです。
結果として助成金の不支給、未払い賃金問題、労務監査の指摘が発生します。
シンプルにする具体的な進め方
複雑化した賃金制度を見直すときは、次のステップが有効です。
(1)現行の手当を棚卸しする
- どの手当が何の目的で付いているか洗い出す
- 支給額や運用ルールを整理する
(2)不要・形骸化した手当を廃止・統合する
- 評価に直結しない手当を一本化する
- 「役職手当」「職務手当」など似た内容を統合する
(3)基本給と評価制度を連動させる
- 複雑な手当で調整するのではなく、
評価による昇給・賞与で報いる仕組みに切り替える
(4)就業規則・給与規定を見直し、全社員に説明する
- ルールを明文化し、社員に共有することで「不透明感」をなくす
社員のモチベーションを守る「評価制度」という選択
「評価を反映したい」という想いはとても大切です。
ただ、賃金体系で表現するより、評価制度でしっかりフィードバックし、成長を促すほうが、社員のやる気を育てやすいです。
例えば、
- 半期ごとの目標面談
- 達成度をもとに基本給や賞与を決定
- 頑張りが見える評価表を運用
こうした仕組みなら、賃金はシンプルに保ちながら公平感を実現できます。
まとめ
経営者のこだわりが悪いわけではありません。
ただ、複雑な賃金制度は運用コストとトラブルを生みやすいのも事実です。
- 給与はシンプルに
- 頑張りは評価制度で示す
この考え方が、経営を安定させ、社員から信頼される基盤になります。
「うちは複雑かもしれない」と感じたら、一度見直しを検討してみてください。
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